これっていじめ?パワハラ?指導との区別がつきません。
2年目看護師、20代女性、呼吸器内科所属
呼吸器内科所属の2年目看護師です。先輩の指導がきつ過ぎて、メンタルが落ち込むことがあります。
指導の内容自体は大切なことであり、私が成長するためにも受け入れる必要があると思います。しかし、必要な指導だからと言って、相手のメンタルを追い込むような発言や態度を取っても良いのでしょうか。
私は指導を受ける立場であり、業務にも落ち度があるので、不満に思いながらもいつも口に出せずにモヤモヤしています。指導といじめ・パワハラの区別を教えてください。
指導といじめ・パワハラの明確な区別は難しいです。先輩看護師に悪意がなく、指導に熱が入っていくうちに、度を越えていじめ・パワハラに発展してしまっているケースは少なくありません。
しかし、悪意がないからと言って、いじめやパワハラが許されるわけではありません。指導といじめ・パワハラの区別について正しく理解し、必要に応じて適切な行動を起こしていきましょう。
今回は指導といじめ・パワハラの違いについて説明し、被害に遭った時の対応をご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
「いじめ」や「パワハラ」とは?
職場における「いじめ」や「パワハラ」とは、他者に対して不愉快な気持ちにさせ、実質的な損害を与える行為の総称です。
「いじめ」という言葉は、加害者側に悪意がある場合に使われることが多いです。それに対して、「パワハラ」という言葉は加害者側が無意識のうちに、加害している状況に対して使われる傾向があります。
被害者に対して、個人が攻撃をするケースもあれば、集団で攻撃をするケースもあります。とくに看護師の職場は、派閥が作られがちであり、一人の先輩に目をつけられたことをきっかけに集団からの攻撃が始まることが少なくありません。
指導といじめ・パワハラの違い
では、指導といじめ・パワハラの違いはどのような点にあるのでしょうか。
経験の浅い看護師がしっかりと業務を行い、患者さんに適切なアセスメントをするためには、先輩からの指導は欠かせません。
しかし、必要な指導であったとしても、度を越えて相手を精神的に追い込む行為は社会的に許容されません。具体的には、人事院が公開している「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」を参考にすると、指導といじめ・パワハラの違いがわかりやすいです。
引用:パワー・ハラスメント防止ハンドブック(人事院)
指導といじめ・パワハラの違いを7つのポイントから見ていきましょう。
①目的
指導の目的は「相手を成長させること」です。それに対して、いじめ・パワハラの目的は「相手を馬鹿にする」「自分の思いどおりにする」ことであり、同じ内容の指摘であっても大きな違いがあります。業務上で必要な指摘であったとしても、相手の成長につながらず、ダメージを与えるだけの言動はいじめ・パワハラにあたるでしょう。
ただし、適切な指導であっても、受け手に学ぶ姿勢がなければ成長につながらない、というケースもあります。そのため、第三者からの客観的な意見を交えて、目的が適切であるか判断しなければなりません。
②業務上の必要性
指導は業務上に必要であり、健全な職場環境を維持するためのものでなければなりません。業務に関係がない個人攻撃はもちろんですが、業務上の必要性があっても不適切な内容や量の指示はいじめ・パワハラにあたります。たとえば、新人看護師の許容範囲を超える量の宿題を課す、不当に業務を行わせない、などの行為になります。つまり、業務上の必要性を利用して、相手を追い込む行為は、いじめ・パワハラに該当するということです。
③態度
指導にあたる態度は「受容的」「肯定的」「見守る」「自然体」などです。それに対し、いじめ・パワハラの態度は「威圧的」「攻撃的」「否定的」「批判的」などにあたります。同じ内容の言動であっても、態度によって指導であるか、いじめ・パワハラになるか変わるということです。
しかし、態度は受け手の感受性によって、印象が大きく変わるものでもあります。悪気なく否定的な態度を取るなどの行為がクセになっている方もいるかもしれません。そのため、態度単独では判断せず、他のポイントと合わせた総合的な判断が必要です。
④タイミング
指導の適切なタイミングは、「その場でタイムリーに」かつ「相手の受け入れ準備ができている」場合です。いじめ・パワハラにあたるタイミングは、「過去のことを繰り返す」や「相手の立場や状況を考えず」が該当します。ナースステーションや廊下などの人目につきやすい場所にいるタイミングや、過去のミスをしつこく指摘するなどの行為は不適切であるといえます。
⑤誰の利益か
目的と似ていますが、誰の利益になるかも判断基準となります。指導の目的は「組織や相手の利益になる」のに対し、いじめ・パワハラは「自分の気持ちや都合が優先」されるという違いがあります。特定の誰かだけが利益を得られる、楽をできるような指示は不適切ということです。よくある「ナースコールは新人看護師が出て!」というような指示は、特定の看護師のみが利益を得るため、不適切であるといえます。
⑥自分の感情
感情はどうしても態度となって現れ、相手に伝わるものです。指導に適切な感情は「穏やか」「好意」「きりっとした」であるのに対し、いじめ・パワハラにあたる感情は「いらいら」「怒り」「嘲笑」などがあります。感情のコントロールも仕事の一環です。看護師は人一倍気を使う職業ではありますが、感情の乱れで周囲に影響を与えることは許されません。
⑦結果
指導といじめ・パワハラの最も大きな違いは、「結果」です。ある言動の結果、受け手や職場がどのように変化するかを考えなければなりません。指導であれば、受け手の行動が改善され、職場に活気が出ます。しかし、ある言動の結果として、受け手が萎縮し、職場の雰囲気が悪くなってしまえば、いじめ・パワハラです。
指導者は指示を出しっぱなしではなく、その結果として受け手や職場環境がどのように変化するかを観察する必要があります。
いじめやパワハラの被害を受けていると感じたら誰かに相談しよう
上記の7つのポイントを総合的に考え、自分が職場でいじめ・パワハラにあっていると感じたら、すぐに誰かに相談しましょう。
まずは話しやすい人からで大丈夫です。同僚や友人、家族などに話を聞いてもらい、第三者からの意見をもらえると、状況をより客観的に捉えられるかもしれません。
職場にハラスメント相談窓口があれば、利用してみるのも一つの手です。また、外部への相談を希望する場合は、労働基準監督署の労働相談コーナーなどもあります。
メンタルが弱ってしまうと判断力が低下し、適切な行動を取れなくなってしまいます。違和感があれば早めに行動を起こすと良いかもしれません。
まとめ
今回は指導といじめ・パワハラの違いについて説明しました。残念ながら看護師の世界はいじめ・パワハラが横行している状況です。被害にあっていると感じたら、すぐに相談などの行動を起こしましょう。
いじめ・パワハラが横行している職場を変えるのは難しいです。働きにくさを感じたら、転職を検討するのも一つの手かもしれません。悔しい気もしますが、自分が環境を変える方が手軽で早い問題解決につながります。
転職を検討したい場合、プロのコーディネーターへの相談がおすすめです。プロの視点から、あなたのニーズに合わせた提案が受けられますよ。ぜひ、気軽にご相談ください。