プリセプターとは?後輩看護師に指導するのも仕事のうち
「プリセプターを任された。嬉しいけど、私にできるかな・・・」
看護師として数年働くと、先輩看護師としてプリセプターという役割を任されるようになります。病院によってプリセプターを任される時期は異なりますが、概ね3~4年目が一般的です。
3~4年目の看護師は、日々の看護業務にやっと慣れてきた時期になるので
こんな複雑な気持ちになるものです。
プリセプターの役割というのは、 “新人看護師の成長をサポートすること”が全てです。
プリセプターの心構えとは?
今までは一人の看護師として、患者さんに看護を提供することに集中していたことかと思います。ただ、プリセプターになると新人看護師にお手本を見せる存在となります。
この“お手本”という言葉に、戸惑いを感じている看護師も多いのではないでしょうか。
プリセプターとプリセプティの関係は、うまく信頼関係を構築できれば数倍のパワーを発揮できるものです。
その一方で、関係性がうまくいかずにお互いがストレスを感じて、新人看護師が辞めてしまうという事態に陥っているのを見かけます。私は多くのプリセプターと新人看護師を見てきましたが、ある共通点があります。
それは、
・尊重不足
・無意識にパワハラをしている
です。
あなた自身が新人看護師時代に厳しく指導を受けていたとします。こういう状態で指導を行うと、同じような指導方法で相手に伝えようとしてしまいがちです。
新人看護師は、厳しく指導されます。
「患者さんのところでケアをしている時が一番楽。ナースステーションに戻るのが怖い。」
と思うのではないでしょうか。
しかし時代の流れとともに、新人看護師の望む環境というのは変化をしています。
新人看護師の性格もありますし、ルーティンに教えようとするのは良くありません。
あくまで、 “相手の成長スピードに合わせる” という視点が大事になります。
これを頭に入れた上で、3つの心構えをお伝えします。
“緊張させない環境づくり”
新人看護師は、慣れない環境で毎日必死に仕事を覚えようとしています。経験があると思いますが、緊張して心に余裕がない時というのは、何を言われても覚えていないものです。
「新人看護師の頃の記憶があまり残っていないんだよね。」
中堅看護師やベテラン看護師は、口を揃えてこう言います。
つまり、どんなに丁寧にわかりやすく説明をしたとしても、緊張や不安が解けない限り効果的でないことがわかります。まずは緊張をほぐして気軽に相談できるような雰囲気を作ることが先決になります。
緊張している様子が続いているようなら
「緊張しているのかな?リラックスリラックス!」
というような優しい雰囲気と笑顔で接することが大事です。
こういう関わりを続けていくと、いつの頃からか新人看護師から
「〇〇さん。いつもありがとうございます。」
というように、こちらから声をかけなくても自然な会話ができる関係になります。
“減点ではなく加点する”
看護は欠点に焦点があたり過ぎます。
看護師は、患者さんの生命を扱う仕事になるのでミスは許されない職業です。
ですが、相手の悪い部分や苦手なことばかりに目を向けてしまう減点法は、私は良くありません。
ある新人看護師は
「一度も褒められたことなんてありませんよ。目が合うたびに、何か言われるから顔も見たくありません。」
こんな風に話しているのを聞いたことがあります。
これでは、新人看護師の自己評価も下がりますし、ストレスもどんどん蓄積していくのがわかります。
そして、成長の伸び悩みが起きて退職をするという最悪の結果が待っているのです。
こうならないように、私は後輩看護師に接することに徹底していることがあります。
それが “加点法” という方法です。
新人看護師は、
「これで大丈夫なのだろうか。どうしたら良いのだろうか。」
という不安を常に抱えています。
声をかけ続けると、新人看護師の緊張は徐々にほぐれて笑顔が少しずつ多くなってきます。
ステップアップをするための課題を与えていくのが大事です。
“相手を知ること”
「働いて半年が経ったから、これくらいはできるだろう。」
「これは知っていて、当たり前のこと。」
こういう考え方は、捨てた方が良いです。
この考え方は、自分自身の物差しで判断していることになります。
あくまで、新人看護師の成長スピードに合わせるようにしてください。新人看護師と一緒に相談しながら進めていくことで、信頼関係を作り上げることができます。成長に合わせたラダー指標はありますが、新人看護師に合わせて計画を立てていくことが大事です。
指導時のポイント
プリセプターと聞くと指導のイメージを強く思いがちですが、私としては“気軽に相談できる人” という役割が強いと思っています。だからこそ、歳の近い先輩看護師がプリセプターに選ばれるんです。
とは言っても、
「今まで経験がないし、どうやってサポートをしていけば良いのだろう。」
悩んでしまう看護師も多いですよね。
ポイントの一つとしては、“新人看護師をよく見て、成長している部分を全力でほめる” ということです。失敗が目立つ新人看護師ではありますが、新人看護師が何も努力をしていないわけではありません。努力をして工夫をして勉強して、その結果としてうまくいかなかった事実があるのです。こういう風に考えてみると、新人看護師のほめる部分はたくさんあると思いませんか?
コミュニケーションが苦手だった人が、患者さんと笑顔で会話ができているのを気づいたら
「患者さんへの声かけ、スムーズになっているね。日々、努力しているのがわかるよ。」
というように声をかけることができます。
点滴や採血が上手にできたときは、
「前より看護技術がうまくなっている。失敗もあると思うけど、確実に成長しているから自信持ってね。」
というように、素直な気持ちを伝えるようにしましょう。
こういう声かけは、指導側が思っている以上に新人看護師の心に大きく響くものです。
少し過剰だと思うくらいに褒めたほうが、新人看護師は照れながらもモチベーションを高めてくれます。人というのは、誰でも認められると嬉しいものです。
“ナースステーションの看護師がたくさんいるところでほめる”ことです。
周りの看護師がたくさん聞いている環境で褒められると、全員に認められているような感覚になります。
時には指導が必要な時もありますが、 “褒めて伸ばす”
この方法こそが、新人看護師をサポートするという意味だと思います。
プリセプター制度のメリットとデメリット
プリセプター制度は、マンツーマン指導を行うことができる教育体制を言いますが、メリットもあれば当然デメリットも。説明していきますね。
プリセプター制度、プリセプターとしてのメリットとしては
“新人看護師に教えることで、自分自身の知識や技術を高められる”
ここが一番大きいです。
プリセプターは、今まで経験してきたことや知識、技術を正しく覚えてもらうように伝えます。正しく伝えるためには、正しく確立された技術や知識が必要となります。
理解しているつもりでも曖昧になっていることがあるので、新人看護師に伝えるという場面を利用して、成長することができます。
次に、新人看護師のメリットとしては“どんな小さなことでも質問や相談がしやすい” というのが最大のメリットです。看護というのは、政界が一つではないことが多いですよね。
そういう状態の時に、先輩看護師に複数から指導されると、どう学んでいってよいか混乱しがちです。こういう状態にならないように、プリセプター制度というのはメリットが大きいと感じます。
このようなメリットがある一方、プリセプターとしてのデメリットは“負担とプレッシャー” です。
一度でもプリセプターを経験したことがある人なら理解できると思いますが、想像以上のストレスになります。
新人看護師の成長が停滞していると、ベテラン看護師などから
「〇〇さんの指導はどうなっているの?」
というような声をかけられます。
プリセプターとしては新人看護師の成長スピードに合わせて指導をしていきたい。
その一方で、周りの声にも対応していかなければいけないケースもあるのです。
こういう声に耐えられなくなると、焦りとストレスで少し無茶な指導をしてしまうのです。
そして、新人看護師のデメリットとしては“プリセプターとの性格が合わないと辛い1年となる”
どうしても性格的に合わない人というのは、世の中に存在します。
プリセプターは新人看護師よりストレスを感じる
プリセプター制度のデメリットで少し触れましたが、一人の新人看護師を育てるというのは非常に大変なことです。新人看護師の成長を目的とみられがちですが、プリセプター自身の成長も目的の一つとされています。そのため、最初の半年は特に大変です。
辛いと思うことも日々あるでしょうし、イライラすることもあるでしょう。
今まで経験したことがない状態で指導を任されるので、当然の反応だと思います。
このストレスをうまくコントロールしながらプリセプターも成長できれば良いのですが、中には重圧に耐えられない人もいます。
ストレスとなる原因はいくつかあって、
・指導がもともと苦手
・元々の性格でつい冷たくしてしまう
・日々の仕事が手一杯で、指導まで余裕がない
・何度か指導をしても、成長が見られない
こういう原因がいくつかあります。
このように過度なストレスがかかるのは、プリセプター自身が悪いわけではありません。
本来、新人看護師を育てるために必要なのは、“職場の看護師全員で育てる” という意識です。プリセプターは、新人看護師の一番近くで支える存在です。
プリセプターだけに責任を全て押し付けようとするから、疲れきって辞めたいと思わせてしまうのです。プリセプターの待遇は、医療施設によって大きく異なります。
病棟全員が同じ気持ちで、新人看護師を育てようとする良い雰囲気の場所もたくさんあります。あなたがもし、プリセプターとして一人で辛さを抱えているのであれば、私たちに相談してください。人間関係が良好で、みんなで頑張ろうとしている病院の情報をたくさん持っていますし、誰かに相談することで気持ちが楽になることもあります。
まとめ
看護師は、日々成長をするための試練があります。新人看護師として、なんとか一人前の看護師になったと思えば、次は指導者側としての力量を試されます。どの壁も看護師の成長として必要なことではありますが、少しはやすみたいと思いますよね。
「今の職場で、このまま働き続けて良いのだろうか?」
このように思うのであれば、一度相談してくださいね。
相談をすることで今の職場が最適だと再認識するかもしれないですし、新たな転職先に未来があると感じるかもしれません。