制服を色分けすると一人当たり80時間もの無駄な残業が削減。その効果は分業にあり!?
働き方改革が言われて久しいですが、命をあずかる医療の現場ではなかなか改革が進んでいません。残業抑制、賃金の正常化、有給消化など、さまざまな課題を抱えたまま、日本の医療業界は高齢化社会を迎えています。
そこで、働き方改革をアイデアで実行しようと、熊本県の病院が制服を色分けしてみることにしたのです。日勤は赤、夜勤を緑の制服してみると、定時間近の看護師には、医師も同僚看護師も声掛けしないことがわかったのです。
今回は、働き方改革で制服を色分けすることによる効果をみていきます。
看護師の制服色分けの背景
働き方改革は、そんな課題に一石を投じるものでした。しかし、なかなかどこの職場でも残業抑制が進んでいないようです。
熊本県熊本市にある熊本地域医療センターも、そのひとつでした。入院病棟では就業前の早出および終業後の残業が常態化しており、看護師も疲れて、なかなかプライベートに時間をさけなかったようです。
そこで、前院長の廣田昌彦医師が考案したのが、日勤の看護師を赤のウェアで、夜勤の看護師を緑のウェアでわけることでした。これなら、ナース服を着るときに意識するだけで、あとはまったく何もする必要はありません。
看護師の制服色分けの効果
これが、全員白の制服だったら、見た目上、夜勤と日勤の人の見わけがつきませんから、ついつい医師や同僚看護師の側も、仕事をセーブしてほかの人に振るということができます。
これはアメフトをヒントに考案されたものだそうです。アメフトは攻めと守りに分業がしっかりなされており、それをみた廣田医師が思いつき、2014年から取り入れることとなりました。
なんと、残業は年間110時間、つまり月10時間近くあったものが、20時間、1時間と少しに減ったのです。
効果は抜群です。ウェアを着ている本人も、違う色の制服の人たちが入ってきて、自分だけ異なった色を着ていたら焦りますし、定時退勤を意識するようになるとのことで、周りも本人もいい効果をもたらした模様です。
その他の施策
●音楽で就業1時間前をアナウンス
●複数の科をこなせる看護師の育成
●人材交流を活発にしてサポートしやすい仕組み
●産休・育休をとりやすい環境
を作り、その結果、労務環境が改善して離職率が1割未満へと激減しました。採用もスムーズに進んでおり、とにかく働きやすさを全面に打ち出しています。
これが本当の働き方改革として、東京都の日本看護協会では、表彰も受けています。先進事例表彰として最優秀賞も受賞したのが、この制服色分けの施策です。
看護師の制服色分けがもたらす影響
それぐらい、わかりやすいのに効果が抜群で、しかもデメリットや面倒なことがほとんどない施策というのは珍しく、注目に値する取り組みであることは間違いありません。
法令で看護師の制服の色は決まっていません。ピンクのところもあれば、白のところもあります。医師の制服も決まっておらず、紺の服を着ている方もいれば、白の方もいますよね。
よって、法律で決まっているわけではないので、病院が自由に決めていいのです。よって、日勤と夜勤で制服の色を変えることには効果しかないのです。
毎日、日勤が赤で夜勤が緑なら、わかりやすいですし、患者の側もなんとなく察するのではないでしょうか。医療関係者に過剰な労働を求めず、ひとりの人間として働き方改革を進めていく。これが今、病院関係者にもとめられている姿勢です。
まとめ
働き方改革はとてつもないスピードで進行しており、そうでありながら、病院ではまだまだ進んでおらず、改革を待っている状態ですから、こうした事例を参考に、自分たちの病院も・・・と考える上層部はいるはずです。
制服を取り換えるコストがかかりますが、それなら現状の色に加えて、見分けがつきやすい色味を持った制服を、人数ぶんそろえるだけで終わりです。
あとは、色を変えたことをアナウンスして、定時の時間を意識してもらうこと。それだけで済むのですから、残業手当も抑制されるので、コストは十分ペイすると考えられます。
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