訪問看護はどんな仕事?未経験者でも大丈夫なの?
訪問看護ステーションがここ10年で約2倍となりました。それにともない、訪問看護に従事する看護師も増加しています。実際に「訪問看護師に転職した」という話もよく聞かれるようになりましたね。
「私も訪問看護師になれるかな」と興味を持ちはじめた方も多いのではないでしょうか。しかし、訪問看護の経験がない看護師には、少しハードルが高く感じるものですよね。
結論からいうと、未経験者でも訪問看護への転職は可能です。今回は訪問看護についての概要と、未経験者の転職について説明します。ぜひ、参考にしてみてください。
訪問看護とは
また、日本は後期高齢者が急増する2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築を目指しています。訪問看護は、地域包括ケアの担い手としての役割が、今後ますます期待されるでしょう。
既存の枠にとらわれない看護が提供できる
訪問看護の魅力のひとつは、既存の枠にとらわれない看護が提供できることです。医療機関で働く看護師は、求められる役割が決まっており、どうしても既存の枠内で動かなければなりません。その点、訪問看護では、利用者さんにより良い在宅生活を実現することを目的とするため、自由な発想で看護が提供できます。
自宅の状況は利用者さんによりさまざまなので、より良い療養環境にするために工夫したり、他職種連携したりします。医療機関ほど物品は充実していないものの、発想次第で利用者さんのQOLを高められるのがやりがいです。
ライフスタイルに合わせた働き方が実現しやすい
看護師自身のライフスタイルに合わせた働き方が実現しやすいのも、訪問看護の魅力のひとつです。夜勤をしなくても病棟看護師と同等の収入があり、訪問後に直帰OKな事業所もあります。一日の訪問件数を調整することで、家庭を優先するのも可能です。逆にしっかりと稼ぎたければ、訪問件数を増やしてもらうなどの対応もできます。
看護師も現場を離れるとそれぞれの生活がありますよね。ライフスタイルに合わせた働き方を考えられると良いかもしれません。
病棟看護師と共通するケアや知識
病棟で培った知識や経験が活かせると知るだけでも、ハードルがグッと下がるのではないでしょうか。
健康状態のアセスメント
バイタルサイン測定をはじめとし、栄養・排泄・清潔などの観察から得られた情報をアセスメントします。そして、次の訪問日まで安心して過ごしてもらえるように、アドバイスをしたり、チームに報告したりします。訪問看護は決められた時間内で、ささいな変化に気がつける観察力が求められます。急変を見抜く力も欠かせません。よって、病棟での経験が活かせる場面も多いはずです。
幅広い日常生活支援
病棟での看護と同様に、食事や清潔、排泄、環境整備など利用者さんが必要とする日常生活支援を行います。物品の有無や種類などが家庭により異なりますので、きっちりと基本を押さえておくことが求められます。
訪問看護は基本的に看護師一人です。ですので、幅広く生活支援ができるように、幅広く知識や技術を身に着けておかなければなりません。
医療処置・ケア
利用者さんの疾患によっては点滴や褥瘡処置、服薬管理などの提供が必要です。病棟での看護と同様に、医師の指示に従って医療処置やケアを提供していきます。医療依存度が高い利用者さんの場合、各種留置カテーテルの管理、酸素投与、人工呼吸器管理、吸引といったケアも行います。
家族などの介護者への支援
訪問看護にも、病棟同様に家族支援が含まれます。利用者さんの状態に合わせたケア、状態観察、コミュニケーションなどを指導し、より良い療養環境を目指します。とくに終末期や認知症である利用者さんであれば、家族支援の重要度が高まります。利用者さんと家族が良好な関係であり続けるには、介護者の無理な負担は厳禁です。
そのような意味でも、利用者さんだけでなく家族との会話からも、ささいな変化に気が付いていく必要があります。
病棟看護師とは異なるポイント
「生活の場」である自宅でサービス提供する
訪問看護がサービスを提供するのは、医療機関ではなく自宅となります。基本的に医療機関は「治療の場」であるのに対し、自宅は「生活の場」です。看護師は利用者さんの自宅にお邪魔する、という意識が必要となります。それぞれの家庭のしきたりやルールは異なり、医療機関の常識が通用しないことも珍しくありません。
そのため、利用者さんとの信頼関係づくりがより重要となってきます。
基本的に看護師1名で訪問する
実際に、利用者さんの自宅に訪問するのは、基本的に看護師1名です。病棟では2名で協力して行っていた処置やケアも、一人で行わなければなりません。ですので、訪問前にキッチリと動きを確認しておかないと、思わぬところで時間を使ってしまいます。
ただし、新人の訪問看護師がいきなり一人で訪問することは少なく、先輩看護師と同行訪問して経験を積んでいきます。
きっちりと決められた時間でサービス提供する
訪問看護は1件当たりのサービス提供時間が、医療保険や介護保険の範囲でキッチリと決まっています。病棟ではその日の状況に応じて、ある程度融通を利かせることができますが、訪問看護ではそうはいきません。時間がオーバーしてしまわないように、常に意識しておく必要があります。
各家庭を自転車や車で移動する
利用者さんの各家庭間の移動は、自転車や車が一般的です。都市部では渋滞を避けるために自転車、地方では移動距離が長くなりがちなので自動車を使う傾向があります。自転車での移動となると、やはりそれなりに体力が求められます。とくに夏場の暑い時期や雨風の日には体力を消耗してしまうものです。
看護師としての経験が長く、知識やスキルに自信があっても、疲れ切ってしまうと役割が果たせません。その点、看護師経験が多少浅くても体力のある人の方が、有利な面もあるといえるかもしれません。
訪問看護は未経験でも大丈夫?
未経験者が知っておくと不安が和らぐポイントを説明します。
訪問は一人で行うがチームで利用者さんを看る
実際に利用者さん宅へ訪問するのは看護師一人ですが、自分だけですべての責任を負うと考える必要はありません。なぜなら、訪問看護もチームで医療を提供するからです。基本的には医師が作成する指示書に従って看護を提供し、収集した情報をもとにチームで方針を決定していきます。
また、万が一、利用者さんに異変があった場合は、管理者や医師へ連絡して指示を仰ぐことも可能です。
最初は先輩看護師と同行訪問で経験を積む
未経験の看護師がいきなり一人で訪問を行うことはありません。最初の慣れない内は先輩看護師と同行訪問をしながら経験を積んで、自立を目指していきます。もし、不安が大きいようであれば、転職の際にどれくらいの期間サポートが付くのか確認しておくと安心ですよ。
訪問看護への転職前にチェックしておきたいポイント
オンコール
「オンコール」とは、利用者さんからの緊急連絡に備えて、夜間や休日に出勤できる体制で待機することです。自宅と職場が遠い場合には、ステーションに泊りで待機する場合もあります。基本的にオンコールには手当が付き、緊急訪問をするとさらに別途手当がつく場合もあります。電話があったからと言って必ず緊急訪問するとは限らず、電話対応で済むことも少なくありません。
しかし、オンコールありとオンコールなしでは、プライベートや収入が大きく変わってきます。自分の望むライフスタイルに沿った、勤務形態であるかチェックしましょう。
新人への教育体制
即戦力を求める訪問看護ステーションなどであれば、新人に対して手厚い教育を実施していないこともあります。実践を通して早く学んで自立したい方には良いかもしれませんが、未経験で不安が大きい方にはおすすめできません。ある程度の規模がある訪問看護ステーションで、教育体制が整っており、マニュアルや業務ノウハウが整っているか、チェックが必要です。
利用者さんの層
ステーションによって、利用者さんの層が偏っている場合があります。たとえば、認知症高齢者中心、小児中心、リハビリテーション中心といった具合です。自分自身が幅広く経験していきたいのか、それとも興味のある分野を経験していきたいかを考えておくと良いですよ。
まとめ
未経験者が転職を成功させるポイントは、効率の良い情報収集です。
転職コーディネーターはタイムリーな情報提供を行っています。複数のコーディネーターとの面談を通じて、訪問看護への転職を成功させましょう。
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