はじめてプリセプターになる看護師が知っておきたい心構えとは?
看護師として数年働き、後輩が増えてくると指導や教育を担当する機会も増えてきます。新人指導の中心的存在となるのが「プリセプター」です。
そして、プリセプターを担当することが多いのは3~5年目の看護師です。突然、上司から「来年はプリセプターを頼むわね」と言われて戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
自分の業務で精一杯なのに、新人指導も担当するとなると少し気が重くなるものですよね。今回ははじめてプリセプターを担当する看護師に向けて、知っておくと気が楽になる心構えを説明します。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
プリセプターはどのような役割?
新人看護師への直接的な指導が想像されがちですが、プリセプターの役割は多岐にわたります。まずは、自分に任されたプリセプターという役割について、十分に理解していくと良いですよ。
プリセプター制度とは
プリセプター制度とは、新人看護師の教育システムのひとつです。1人の新人看護師(プリセプティ)に対して、1人の先輩看護師(プリセプター)がマンツーマンで指導します。直接、業務や看護の指導を行ったり、日々の業務の振り返えったりして、成長を促すのがプリセプターの役割です。また、職場ごとに定められた年間計画に沿って、新人看護師が成長できるように計画を組んでいくのもプリセプターの役割になります。
職場によっては「エルダー」や「シニアプリセプター」などと呼ばれる、プリセプターの相談役が配置される場合もあります。
プリセプターになる看護師の条件
プリセプターになるための資格や一定の条件はありません。多くの場合、3~5年目の若手看護師がプリセプターを担当しますが、職場の状況によりこの限りではありません。また、基本的にプリセプターの役割は1年間のみです。看護師は2年目には基本的な業務が自立して行えるようにならなければなりません。
そのため、プリセプターは1年間の限られた時間で、新人看護師が自立できるように関わっていく必要があります。
プリセプターに求められる能力
プリセプターに求められる能力で、まず挙げられるのが「指導力」です。看護師としても社会人としても1年目の新人看護師が、自立して業務を行い患者さんへより良い看護を提供できるように成長を促していきます。ほかにも、新人看護師が職場に馴染めるように人間関係を調整する能力や、年間計画に沿った指導を行うための計画力も求められます。
もちろん、プリセプターになったからといって、はじめからこれらの能力を備えている必要はありません。
新人看護師への指導を通して、プリセプター自身も成長していくものだと考えておくと良いですよ。
はじめてプリセプターになる看護師にありがちな5つの不安
ここでは、はじめてプリセプターになる看護師にありがちな5つの不安と対処方法について説明します。あなた自身の不安に当てはまるものがあれば幸いです。
①「私に指導なんて無理…」という指導力に対する不安
まず、なんといっても新人看護師への指導に対する不安は、多くのプリセプターが抱きがちです。なぜ、多くのプリセプターが指導力への不安を抱きがちかというと「未経験」だからではないでしょうか。ですが、心配しすぎる必要はありません。なぜなら、新人指導は部署全体で行うものであり、あなた自身がすべてを抱え込む必要はないからです。
自信をもって指導できる部分は指導し、不安な部分は先輩や同僚と相談しながら方針を決めていきましょう。
②「新人と良い関係を築けるかな…」という人間関係の不安
職場の人間関係には多くの看護師が気を使っているのではないでしょうか。指導をする側とされる側では、上下関係ができやすく、良い関係を築けるかとくに気を使うものですよね。そこで思い出してほしいのが、あなた自身の新人時代です。年の離れたベテラン看護師よりも、比較的年齢が近い若手看護師の方が話しかけやすかったのではないでしょうか。
プリセプターを若手の看護師が担う理由のひとつに、新人看護師のコミュニケーションの際の負担を減らすというものがあります。
ですので、変に緊張することなく、自分がされて嬉しかった関わりを心がけましょう。そうすれば、自然と良い関係が築けるのではないでしょうか。
③新人への指導と先輩からのアドバイスの板挟みになるという不安
看護師の仕事のすべてがマニュアル通りに動けが良いというものではありません。患者さんの個別性や、現場の状況に応じて看護師は対応を変えていく必要があります。そしてその対応は、看護師ごとの価値観や優先順位によって異なります。ですので、プリセプターとしての指導内容と、先輩からのアドバイスが食い違う場面も珍しくありません。
本来は看護師ごとの価値観の違いは尊重されるべきですが、新人指導の場面では一貫性がないと新人看護師を迷わせてしまいます。また、先輩からのアドバイスと異なる指導をすると、人間関係の悪化の原因にもならないか心配ですよね。
新人看護師への一貫性のある指導をするには、部署全体で定期的に話し合いが必要です。どのような方針で指導をするのか、定期的に確認をすることで、板挟みになる心配は減りますよ。
④通常業務に加えて指導もしているとキャパオーバーになるのではという不安
多くの職場は慢性的に人手不足を抱えており、新人指導と通常業務を並行して行わなければなりません。指導をする立場のプリセプターとはいっても、まだ経験の浅い若手看護師です。キャパオーバーにならないか不安になるものですよね。もちろん、最初は誰もが通常業務に加えて、慣れない新人指導をすることで手一杯になるものです。ですが、少しずつ要領を掴んでいき、キャパを広げることで余裕が出てくるはずですよ。
キャパオーバーになりそうなときには、リーダー看護師や上司に早めにヘルプを出すのも大切です。新人指導と通常業務、どちらも一人で抱え込まずに部署全体の課題という意識をもつと良いですよ。
⑤「新人が辞めてしまうのでは…」という不安
新人時代に「辞めたい…」と思ったことは、多くの看護師が経験してきたのではないでしょうか。しかし、実際に退職してしまうとなると話は別です。もし、自分が担当する新人看護師が早期に退職してしまうとショックですよね。新人看護師の離職率は「8.6%」です。現実問題として、一定数の新人看護師がさまざまな理由により早期退職を選択しています。
出典:2020年 病院看護実態調査(日本看護協会)
どんなに誠意を尽くして新人看護師の指導にあたったとしても、一定数は退職してしまうと覚悟しておきましょう。退職は必ずしも悪いわけではないので、しっかりと事情を汲んで受け入れていくのが良いかもしれません。
はじめてのプリセプターがうまくいかなくて当たり前!新人と共に成長するチャンスと捉えよう!
そもそも、プリセプター制度は新人看護師のためだけのものではありません。プリセプターとなる若手看護師の成長も期待されているのです。
新人看護師と共に成長できるチャンスだと捉えると良いですよ。指導がうまくいかないときに思い出してもらいたい心構えをご紹介します。
新人看護師には成長の個人差がある
新人看護師にもさまざまなタイプがいます。要領がよく人付き合いもそつなくこなす優等生タイプもいれば、なかなか仕事を覚えられず、人付き合いが苦手なタイプもいるでしょう。また、最近は仕事よりもプライベートを重視する新人看護師も増えているようです。プリセプターとして指導していく中で、新人看護師の成長具合はどうしても気になるものですよね。しかし、患者さんの個別性を重視するように、新人看護師の成長の個人差も受け入れていかなければなりません。
1年間の年間スケジュールに沿う必要はありますが、多少のズレはどうしても出てくるものです。長い目で新人看護師の成長を見守っていくと良いですよ。
プリセプターの指導力も少しずつ成長するもの
個人差があるのは新人看護師だけでなく、プリセプターも同様です。はじめから指導や人付き合いをそつなくこなせるタイプもいれば、どのように新人看護師と関わり、指導をすれば良いかわからないタイプもいます、先述したとおり、プリセプターとなる若手看護師の成長も、プリセプター制度の目的のひとつです。はじめは指導がうまくいかなくても、周囲からアドバイスをもらいながら、少しずつ成長していきましょう。
1年間の指導経験は新人看護師だけでなく、プリセプターも大きく成長させてくれますよ。
相性よりも信頼関係を重視しよう
新人看護師との相性に悩むプリセプターも多いかもしれません。お互いに一人の人間ですので、どうしても相性の善し悪しはあるものです。そこで覚えておくと良いのが「相性よりも信頼関係を重視する」ということです。相性が合わず、打ち解けるのが難しくても、職場のスタッフとして信頼し合える関係になれば問題ありません。
お互いに看護師として尊重し合える関係を築いていくと良いですよ。
まとめ
プリセプターの経験は看護師として大きく成長できるチャンスです。そのため、一定数の看護師はプリセプターを経験した後に、転職を検討する傾向があります。病院側も若くて指導経験がある看護師は貴重な戦力だと捉えてくれるでしょう。
もしプリセプター経験をステップアップの機会だと考えるのであれば、早めに転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。じっくりと情報収集をし、転職に向けての準備も進めていけると良いですね。
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