出世したくない症候群の看護師が増加中?理由やメリット・デメリットを解説!
「いつかは師長になりたい」「がんばって出世したい」このような出世意欲は、かつて多くの看護師が持つものでした。ところが、近年の若手看護師は出世に興味がなく、むしろ「出世したくない」と考える傾向にあるようです。
このように出世を回避する人々を「出世したくない症候群」と呼ぶ言葉が誕生しています。出世を望まない理由は人それぞれですが、見落とされがちなのは出世しないことによるデメリットです。
今回は出世したくない症候群について解説し、出世する・しないのそれぞれのメリット・デメリットを説明します。長い目でキャリアを考えて、仕事への向き合い方を考えるきっかけとなれば幸いです。
「出世したくない症候群」とは?
2019年に新入社員1,792人を対象に実施された調査では「役職に就きたくない6.9%」「どうでもよい16.0%」との結果が得られています。これらの結果は、2009年実施の調査よりも割合が増加しており、逆に出世を望む新入社員の割合は減少傾向です。
引用:平成31年度 新入社員働くことの意識調査結果
出世意欲の減退について、好意的に捉えれば価値観の多様化といえます。しかし、裏を返せば、仕事への熱意の消失や職場での当事者意識の低下ともいえるかもしれません。
では、なぜ近年の若手看護師が出世を望まない傾向にあるのでしょうか。その理由を見ていきましょう。
出世を望まないさまざまな理由
出世を望まない看護師の主な理由を紹介します。
管理職に魅力を感じない
「自分は管理職に向かない」「ストレスが多そうで嫌だ」
若手看護師にとって、管理職は憧れよりも苦労が多い印象を持つ場合があります。看護師にとって人間関係は永遠の課題であり、管理職にもなればより多くの人間関係の調整に関わらなければなりません。
ときには看護師間だけでなく、医師をはじめとした他職種との関係の調整も必要です。人間関係に疲弊しがちな看護師であれば、管理職を敬遠したい気持ちになってしまうのも無理はありません。
また、若手の内は管理業務がイメージしにくいのも、要因のひとつかもしれません。現場での看護が好きな人にとって、管理職となり患者さんと関わる機会が減ってしまうのは、マイナスポイントといえます。
仕事よりもプライベートを重視したい
出世して管理職になると、業務量が増えて、ときにはプライベートの時間が無くなることもあります。そのため、プライベートを重視したい看護師にとって、出世は大事な時間が奪われてしまうリスクに思えるのです。家庭の事情で残業ができなかったり、負担の小さい業務を担当したかったりする場合も該当します。
あくまで仕事は生活の一部であり、出世によりプライベートの時間が確保できなくなるのは、避けたいところかもしれません。
転職を前提に働いている
近年は終身雇用が崩壊したといわれており、看護師も複数回の転職経験が当たり前となってきました。管理職になると、業務の責任や替えの利かなさから、転職がしにくい雰囲気になってしまいます。そのため、転職を見据えて働く看護師にとって、管理職は不利な状況に思えてしまう場合があります。一方で、管理職の経験があると、転職活動で有利になる場合も。
ですので、一概に管理職になると転職で不利になるわけではありません。しかし、転職以前に退職を言い出しにくくなるのは、避けたい状況といえます。
出世によるメリット・デメリット
なぜなら、人はそれぞれ別の価値観を持っており、出世の影響に対する感じ方も異なるからです。出世によって、仕事に対する満足感が上昇し、人生が好転する場合も考えられます。
自分自身の価値観に沿って、メリットとデメリットを見比べてみましょう。出世して管理職になることの意味が違って見えてくるかもしれませんよ。
メリット
出世による最大のメリットは、管理職の権限を活かして、自分の理想の職場づくりに取り組めることです。役職がない看護師でも、できることはありますが、やはり限定的かもしれません。人事に関わることや、ベッドコントロール、他部署との連携などは管理職の役割です。普段の業務で働きにくさを感じている点も、管理職であれば直接的に解決に取り組めます。
そして、管理職になると、マネジメント能力や指導能力といった新しいスキルを学べます。マネジメントの範囲は、最初の内は所属部署だけですが、経験を積むことで看護部全体、病院経営に携わることも可能です。
看護師として、社会人として大きく成長できる機会は魅力的ですよね。
デメリット
その反面、出世によるデメリットは、業務の責任の大きさや人間関係のストレスで疲弊しやすいことです。あなたも職場の管理職を身近で見ていて、感じたことがあるかもしれませんね。また、管理職になると、臨床現場で患者さんに直接看護を提供する機会は減ります。人によっては、患者さんと関わる機会が減ることをデメリットだと感じるかもしれません。
もう一点、意外なことに管理職になったからといって、必ずしも給与面で有利になるとは限りません。基本給アップや役職手当が期待できる反面、夜勤手当がなくなり、総支給は減ってしまう場合もあります。
給与アップをモチベーションに出世を目指していると、「こんなはずでは…」と後悔してしまうかもしれません。
出世しないメリット・デメリット
メリット
出世を望まず、管理職にならない働き方のメリットは、慣れた仕事でストレスの少ない日々を過ごせることです。プライベートを重視したい看護師にとって、できるだけ仕事の負担は減らしたいところですよね。プライベートには趣味だけでなく、家庭も含まれます。家庭の事情で残業ができず、負担も小さくないと仕事を継続できない人もいますので、管理職が負担に感じるのかもしれません。
「現場で患者さんと関わり続けたい」と考える看護師も、管理職を避けるメリットが大きいものです。看護師としてのスキルを磨くと、患者さんへのケアの幅も広がり、より良い看護が提供できますよね。
メリット
出世を望まない最大のデメリットは、職場での居心地が悪くなっていくことです。一緒に働いていた同期や後輩もいずれ出世し、上司となっていきます。いくら仕事とはいっても、同じ立場にあった看護師と、上下関係ができるとやりにくいものです。働き方が多様化しているとはいえ、医療業界はまだまだピラミッド型の縦社会です。若い看護師が年々増えていく中、出世を望まない中堅・ベテランが現状維持するのは難しいかもしれません。
そして、出世を望まずにいた看護師がなんらかの理由で転職を考えた場合、選択肢が限られてくる可能性があります。
中堅やベテラン看護師には、自立した業務だけでなく、管理や指導の役割も期待されます。出世を望まず、看護師として成長の機会を逃し続けると、将来の選択肢を狭めてしまうリスクがあると覚えておかなければなりません。
職場での昇進だけが出世ではない
管理職になることに捉われず、どのようなキャリアプランが自分に合っているか考えてみると良いかもしれません。
スペシャリストとして現場で活躍し続ける
近年は認定看護師・専門看護師に加え、一定レベルの診断や治療が行えるナース・プラクティショナー(NP)が注目されています。まだ日本ではNP制度が活躍できる基盤が整っていませんが、知名度は年々上がっています。
臨床スキルを高め、専門家として出世していくのも選択肢のひとつです。患者さんとの関わりを続けたい看護師は、検討してみてはいかがでしょうか。
仕事に前向きになれないのは職場が合っていないのかもしれない
そもそも、出世に前向きになれないのは、職場が合っていないのかもしれません。今の職場での仕事内容や人間関係に不満があれば、職場に貢献しようという気持ちも湧きませんよね。「人生100年時代」といわれるように、看護師も長い目で仕事と向き合うべき時代がやってきました。若いうちに、看護師として成長するモチベーションが保てる職場を見つけておくと、自然と出世意欲も湧いてくるかもしれません。
出世に関するメリットとデメリットをよく考え、場合によっては転職も視野に入れておくと良い選択ができますよ。
まとめ
働き方が多様化する近年、かえって自分に合った働き方がわからないと悩む看護師が増加中です。
まずは複数の転職コーディネーターとの面談を通して、あなたのニーズを明らかにしましょう。そしてニーズに合ったキャリアプラン、転職を計画するのがベストです。あなたに合った働き方がきっと見つかりますよ。
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