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ISBARを使って他職種への報告やコミュニケーションをスムーズにしよう!

ISBARを使って他職種への報告やコミュニケーションをスムーズにしよう!

医療事故は様々な要因が複雑に絡みあって発生します。その原因の一つが「コミュニケーションエラー」です。

京都第二赤十字病院が全職員に対して行ったアンケートでは、看護師72.5%、医師75.0%、コメディカル64.4%が「コミュニケーションエラーを経験した」と回答しました。

引用:当院におけるコミュニケーションの現状とコミュニケーション・エラー防止策(京都第二赤十字病院 医療安全推進委員会)

コミュニケーションエラーは一定数が医療事故に発展します。特に看護師は患者さんに直接関わり処置を行う機会が多いため、コミュニケーションをより慎重に行わなければなりません。また、急変時はコミュニケーションの適切さや迅速さが患者さんの生命を左右します。

「ISBAR」は、患者さんの危機的状況において推奨されるコミュニケーション方法のひとつです。今回は「ISBAR」について説明しますので、ぜひ理解して活用してみて下さいね。

ISBARとは?

ISBARとは、アメリカの医療機関で普及しているコミュニケーションツールです。「チームステップス」というチームワークを強化する目的で開発されたツールに含まれます。

ISBARのそれぞれのアルファベットの意味は以下です。

・自己紹介(Identify)
・状況(Situation)
・背景(Background)
・評価(Assessment)
・提案(Recommendation)

元々は「SBAR」としてアメリカ海軍で使用されており、コミュニケーションエラー防止の観点から自分が何者であるか、誰の報告をしているのかの項目が追加されました。

最後に復唱(Confirm)を追加して「ISBARC」と呼ばれることもあります。

ISBARの項目を具体的に解説!

ISBARの項目を具体的に解説!
ISBARの項目をそれぞれ具体的に見ていきましょう。

自己紹介(Identify)

まずは自分の職業と名前と所属を明らかにし、報告したい患者さんの氏名と部屋番号を以下のように伝えます。

【例】
「〇〇病棟の看護師〇〇です。△△号室の△△さんが…」

当たり前だ、と思う方もいるかもしれません。しかし、急変時などは慌ててしまい、自己紹介をせずに報告を始めてしまうケースは意外と多いのです。

自己紹介が抜けてしまうと報告される側は状況がつかめず、始めから聞き直さなくてはなりません。

状況(Situation)

報告する患者さんに起こっている状況を伝えます。状況とは、患者さんの症状や問題点です。

【例】
「血圧、意識レベルが低下しています。」
「食後に多量の嘔吐がありました。」

患者さんにいつ、何が起こったのかを伝えましょう。この時に「背景(Background)」も伝えようとすると、聞き手が混乱してしまいます。

もし、患者さんが明らかに危機的状況であれば迷わずコード・ブルーなどの院内一斉放送を利用しましょう。

背景(Background)

患者さんに関する情報を伝えます。聞き手が担当医などでこれまでの経過を把握している場合は、バイタルサインや身体所見などを報告しましょう。

聞き手が患者さんの情報を持っていない場合は、入院目的・病歴・治療内容・入院後の経過を手短に伝えていきます。

【例】
「バイタルサインは〇〇です。意識レベルは〇〇。酸素○Lカヌラで投与開始しました。」
「△△の診断で△△治療中の患者さんです。ここ数日は症状ありませんでした。」

ポイントは患者さんの状況を把握するのに必要最低限の情報のみを伝えることです。

評価(Assessment)

実際に患者さんを看ている看護師が情報やデータ、身体所見から考えた評価を伝えます。

ここでの評価は必ずしも正解である必要はありません。あくまで多数ある可能性の一つとして自分の評価に自信を持ちましょう。症状と原因が結びつかない場合は、状況の重大性を伝えると良いです。

【例】
「ショック状態の可能性があります」
「原因はわかりませんが原疾患が急激に悪化していると考えます」

アセスメントを苦手とする看護師は多いかもしれません。適切なアセスメントができないと患者さんの変化に対して危機感を持つことができないでしょう。日常からアセスメント能力向上の取り組みが必要です。

提案(Recommendation)

患者さんに起こっている問題を解決するために聞き手に具体的な行動を提案します。医師に診察を依頼する場合、到着までの時間にできる対処方法も確認しておきましょう。

【例】
「すぐに診察をお願いします。」
「〇〇を投与開始したいのですが意見を聞かせてください。」

聞き手に状況が十分に伝わっておらず、期待する対応が得られない場合は2チャレンジルールを活用しましょう。

2チャレンジルールとは、提案を最低2回は繰り返すことです。
WHO患者安全カリキュラムガイド多職種版では「諦めずに少なくとも2回は懸念を表明することが要求される。」「2回目の主張は1回目とは別のメンバーが行ってもよい。」と記載されています。

引用:トピック4:有能なチームの一員であること(WHO患者安全カリキュラムガイド多職種版)

患者さんの安全を守ることを最優先に考えましょう。

コミュニケーションをより効果的にする4つのポイント

コミュニケーションをより効果的にする4つのポイント
ISBARは非常に有用なツールですが、コミュニケーションの基本ができていないと効果を発揮できません。チームステップスでは効果的なコミュニケーションのポイントを以下の4つあげています。

・完全である
・明確である
・簡潔である
・タイムリーである

引用:チームSTEPPS(チームステップス)ーチーム医療と患者の安全を推進するツールー(日本臨床麻酔学会)

必要な情報を過不足なく、わかりやすく共通の言語で、できるだけ手短に、適切なタイミングで報告することが大切です。

緊急時に急に実践することは難しいでしょう。普段から効果的なコミュニケーションを意識することで少しずつ身についてきます。申し送りや看護師間での報告でも意識していきましょう。

ISBARは急変時の医師への報告以外にも使える

ISBARは急変時の医師への報告以外にも使える
ISBARは主に医師へ急変時の報告や対応を求める際に使用しますが、他職種や看護師とのコミュニケーションにも使用できます。例えば、理学療法士に患者さんの状況に合わせたADL拡大の可否を確認する場合、看護師に患者さんの状況を相談する場合などです。

不要だと判断したISBARの項目は省略しても問題ありません。状況に応じて使い分けるとコミュニケーションの幅が広がり、他職種連携が強化されますよ。

コミュニケーションがスムーズになると医療事故が減るだけでなく、医療者間のストレスが軽減されます。より良い医療を提供する環境には良好なコミュニケーションが欠かせません。ぜひISBARを活用してみましょう。

今の職場では円滑なコミュニケーションをとることが難しいと感じたら、新しい環境に転職するのも一つの方法です。自分に合った環境で働くことで、職場の人たちとのコミュニケーションもとりやすくなるでしょう。

転職エージェントなら、あなたのスキルや能力を活かせる職場を複数紹介してくれますよ。ぜひ、お気軽に相談してみてください。

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