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看護師のインシデントを防ぎ、安心・安全を高めるには?

看護師のインシデントを防ぎ、安心・安全を高めるには?

医療現場は些細なミスが命取りとなる緊張感があります。

しかし、息をつく間もないほどの多忙さで、ミスが起こりやすい環境でもあります。多くの看護師が「インシデントを避けたい」と意識しながらも、避けることができず、落ち込んだ経験があるのではないでしょうか。

インシデントを100%防ぐのは不可能といえます。なぜなら、医療は人が関わる仕事であり、スタッフや患者さんによる個別差が色濃く反映されるからです。ですが、防げるインシデントはできる限り、防いでいかなければなりません。

看護師のインシデントを防いで、安心・安全を高めるには、意識を高めるだけでは不十分です。発生原因や予防方法を知り、万が一の発生時の、適切な対応を積み重ねていくことが欠かせません。

そこで今回は、インシデントについての基礎的知識や予防方法、発生時の対応、振り返りについて説明します。ぜひ、参考にしてみてください。

インシデントとは?

インシデントとは?
「インシデント」とは、医療現場における人為的なミス全般を指す言葉です。明確な定義は存在しておらず、どこまでをインシデントとして取り扱うかの範囲は、医療機関によって異なります。

なお、ハインリッヒの法則によると、「1件」の重大な事故の背景には、「29件」の軽度な事故があり、「300件」のインシデントが潜んでいるとされています。

つまり、目の前で起こったインシデントは患者さんには影響がなく、ほんの些細なものであっても、無視していればいつか重大な事故につながる、ということです。

ですので、インシデントはしっかりと発生予防し、発生してしまった場合には正しく振り返りをしていかなければなりません。

インシデントの種類

インシデントは「薬剤関連」「ドレーン・チューブ」「転倒・転落」など、さまざまな種類があります。患者さんと看護師が関わるものだけではなく、医師や薬剤師といった他職種との連携ミスで発生することも珍しくありません。

また、マニュアルに沿って「やるべきことをやった」結果、発生するインシデントもあります。その場合、個人の要因ではなく環境や組織に要因があるインシデントだと分類され、マニュアルや業務改善が必要です。

インシデントの種類を明らかにすることは、再発予防に有効です。しかし、「○○さんが悪い」という、個人の責任を追及するのは不適切といえます。あくまで、発生予防のためである、という視点が欠かせません。

「インシデント」と「アクシデント」の違い

インシデントと似た言葉で「アクシデント」があります。一般的には、「インシデント=ミス」と「アクシデント=事故」と、認識される場合が多いようです。

あるいは、誤った行為の結果として、なんらかの処置が必要となったケースを「アクシデント」と分類する場合もあります。

このように、医療機関によって「インシデント」と「アクシデント」の分類方法が異なる場合があります。勤め先の分類方法を一度、確認しておくとよいかもしれません。

インシデントを発生予防・早期発見するには?

インシデントは発生予防・早期発見が大切であるというのは、なんとなく意識している方も多いかもしれません。意識することから実践レベルにステップアップするには、具体的な行動が必要です。

具体的なインシデントの発生予防・早期発見の方法を3つご紹介します。

危険予知トレーニング(KYT)の定期的な実施

危険予知トレーニング(KYT)とは、医療現場のさまざまな場面に潜む危険について話し合い、予測力を高めるトレーニングです。病棟での勉強会の一環として取り入れるとよいかもしれません。

自分一人で危険予知をするのではなく、ほかのスタッフと話し合うことが大切です。他者の視点を取り入れることで、自分だけでは防げなかったインシデントに気がつけるようになりますよ。

危険予知トレーニングは定期的に実施するのも、大切なポイントです。トレーニングですので、継続することで少しずつ効果が実感できるようになります。ぜひ、勤め先でも取り入れてみてはいかがでしょうか。

ほかのスタッフのインシデント報告から学ぶ

所属する部署により、発生しやすいインシデントの種類は異なります。

そのため、ほかのスタッフのインシデント報告から、とくに注意すべき場面を予測するのが大切です。「なぜインシデントが発生したのか?」「自分は同じ場面でどのような行動をとっているのか?」を考えるきっかけにするとよいですよ。

「いつもと違う……」という感覚を大事にする

医療現場のインシデント発生予防の難しさは、人を相手にする仕事であり、似たような場面でも個人差が反映されることです。いつも通りのマニュアルに沿って業務にあたれば、インシデントを防げるというものではありません。

そこで意識するとよいのが、「いつもと違う……」という言葉にできない感覚です。この感覚は、あなたの知識や経験、五感が得た情報に対して違和感を覚えた時に起こります。

ですので、はっきりと違和感を覚える部分がわからなくても、その場で立ち止まってほかのスタッフと確認するとよいです。

好発インシデントを知ると予測能力が高まる

好発インシデントを知ると予測能力が高まる
インシデントが発生しやすい場面を知ることで、予測能力が高まります。看護師が遭遇する代表的な好発インシデントを3つ紹介しますので、参考にしてみてください。

好発インシデント①:転倒・転落のインシデント

転倒・転落は、高齢者やADLの低下した患者さんが多い医療現場で発生しがちなインシデントです。要因としては、患者さん・看護師・環境など、さまざまなものが考えられ、気をつけるべき点が多いのも特徴です。

たとえば、患者さんに関する要因だけでも、筋力低下・ふらつき・認知力低下・過信などが考えられます。さらに、同じふらつきであっても薬剤によるものと、病気によるものとでは必要となる対策が異なるので複雑に感じるかもしれません。

ですので、転倒チェックリストを活用し、抜けがないようにリスクを評価していかなければなりません。マンパワー不足が考えられる場合には、業務改善まで考えていく必要があります。

好発インシデント②:薬剤誤投与のインシデント

薬剤誤投与は、どの医療現場でも常に発生するリスクがあるインシデントです。しかも、看護師が行う手技の中でも、薬剤に関する間違いは患者さんに深刻な影響を与える可能性が高く、とくに気をつけなければなりません。

なぜ、薬剤誤投与のインシデントが起きてしまうのでしょうか。その原因のひとつとして、確認事項の多さがあげられます。6Rに沿って、すべての項目が正しい状態で薬剤投与が行われなければなりません。

看護師は、薬剤投与の最終実施者になる場合がほとんどです。つまり、事故が起きた際には責任を追及されやすく、自分の身を守る必要があります。不安や違和感がある場合には必ず相談し、自己判断による薬剤投与は避けなければなりません。

薬剤の種類はジェネリックも含めると非常に多く、そして、似た名前のものまであります。なので、ダブルチェックを基本として、指差し呼称やチェックリストなども活用し、薬剤誤投与を防止していきましょう。

好発インシデント③:患者さん間違いのインシデント

患者さんの確認はフルネームで行い、患者さん自身にも声を出してもらって再確認するのが基本です。しかし、うっかり名字だけで名前の確認をしてしまったり、患者さん自身が間違っていることに気がつかずに返事をしたり、といった原因でインシデントが発生します。

とくに入退院の多い病棟では、患者さんの顔と名前がなかなか一致しないこともあるかもしれません。また、認知症患者さんであれば、確認の意味を理解できないことも考えられます。

同性の患者さんが入院している場合には、病棟全体で情報共有し、間違いを防いでいく必要があります。加えて、他職種や他部署の看護師が関わる場合にも備えて、申し送り方法の統一も目指していくとよいでしょう。

インシデント発生時の対応

インシデント発生時の対応
インシデントはどれだけ気をつけていても、100%防ぐことはできません。看護師は人間を相手にする仕事であり、業務環境が毎回少しずつ変わるからです。

よって、万が一インシデントが発生した場合の対応も考えておく必要があります。インシデントが発生した際の対応についてご説明します。勤務先での対応と照らし合わせながら、再確認してみるとよいかもしれません。

まずは患者さんの安全確保

インシデントに気がついた際、患者さんに生じる被害を最小限にすることを最優先に考えなければなりません。

ただし、焦りは禁物です。新人看護師がやってしまいがちな失敗は、頭が真っ白になり、慌てて行動して被害を拡大してしまうことです。

点滴などであればすぐに投与中止し、転倒であれば意識レベル・VSの確認や打撲部分の観察を行います。その場で取るべき行動がわからない場合は、ナースコールやPHSで応援を呼ぶなどしましょう。

そして、周囲の患者さんへの配慮も大切です。応援を呼びたいからと言って、大声でヘルプを叫んでしまうと、不要な心配を与えてしまいます。インシデントの対象となった患者さんだけでなく、多方面にも配慮が必要です。

リーダー看護師や上司へ報告・連絡・相談

患者さんの安全確保ができたら、つぎはリーダー看護師や上司へ報告・連絡・相談をしていきます。報告内容は5W1Hを明らかにし、その場面だけでなく前後の状況がわかるようにしましょう。

インシデントの内容により、すぐさま担当医への連絡が必要な場合もあります。整理して状況を伝え、処置や検査の必要性や観察項目などの指示を仰ぎましょう。

そして最後は、対応に不備がなかったか、抜けている視点がないか、などを相談します。相談相手は指導役の先輩看護師が適当です。もし、先輩看護師が相談できる状況でなかった場合は、同僚看護師などでも構いません。

記憶がはっきりしている内に事実を整理する

インシデント発生から時間が経つと、その場の状況に関する記憶はあいまいになっていくものです。そこで、記憶がはっきりとしている内に事実を整理して何かにメモをしておきましょう。

インシデントの前・中・後でどのような行動をしたのか、誰がどのような発言をしたのか、このような情報をまとめておきます。可能であれば、正確な時間もメモしておくと、後で記録を書く際に、より正確な記録になります。

なお、この時点では、振り返りや反省までメモをする必要はありません。ただし、振り返りを効果的に行うには、正確な記録が必要となりますので、その点は頭に入れておきましょう。

インシデント後の適切な振り返りが再発を防ぐ

インシデント後の適切な振り返りが再発を防ぐ
インシデントの対応が済んで落ち着いたら、適切な振り返りを行いましょう。あなたが起こしたインシデントは、ほかの誰かも同じインシデントを起こす可能性があります。適切な振り返りは、ほかの看護師にとっても有用なものとなりますよ。

インシデント報告書を書いて振り返る

インシデント報告書は医療機関によって書式が異なります。なので、基本的には勤め先のインシデント報告書の書式に沿って、進めていくことがほとんどです。

内容に関して、インシデントの詳細はメモや記録に沿って、過不足なく記載すれば問題ありません。再発防止策に関しては、「実現可能」かつ「効果的」なものをあげられるとよいです。

慣れない内は先輩看護師に確認してもらいながら、書き進めるとよいかもしれません。インシデント報告書を作成することで、自分自身の振り返りにつながりますよ。

「振り返りの3原則」を守って問題そのものと向き合う

インシデントの振り返りは、自分自身の失敗と向き合うことです。

よって、少し勇気が必要であり、人によっては苦手意識があるかもしれません。そこで、インシデントの振り返りのハードルを下げるために、「振り返りの3原則」を職場で浸透させるとよいでしょう。

振り返りの3原則とは、

① 非難しない
② 恥ずかしがらない
③ 名指ししない

この3点です。つまり、インシデントの問題点のみに焦点を当て、報告しやすい雰囲気づくりが必要ということです。

まずは、自分自身がインシデントと向き合って振り返りをするのを、恥ずかしがらずに問題解決に努める姿勢をアピールするとよいかもしれません。

まとめ

今回は看護師がインシデントを防いで、安心・安全を高める方法についてご説明しました。インシデントを100%防ぐ方法はありませんが、適切な振り返りと対策によって安全性を高めることは可能です。ぜひ、参考にしてみてくださいね。

転職エージェントでは、働きにくさを感じる看護師さんの転職支援を行っています。人間関係の悪い職場だと、相談や確認がしにくく、不要なインシデントに巻き込まれることもあるかもしれません。

もし、人間関係の悪さで働きにくさを感じるのであれば、早めに転職を検討してみてはいかがでしょうか。環境を変えることで、働きやすさがガラッと変わるかもしれませんよ。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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