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地域包括ケアシステムと看護師

地域包括ケアシステムと看護師

過去に例を見ないほど急速に高齢化が進行している日本。厚生労働省が発表した「今後の高齢者人口の見通し」によると、2025年には65歳以上の高齢者の割合が30%を超える見込みです。

厚生労働省「今後の高齢者人口の見通し」

高齢化に伴い認知症患者の増加し、医療・介護現場の負担増大や人材不足が予測されています。このような状況において、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活するために誕生したのが「地域包括ケアシステム」です。

看護師は地域包括ケアシステムの中で中核を担う大切な役割があります。今回は地域包括ケアシステムの概要と看護師の役割、課題と今後の展望について見ていきましょう。

地域包括ケアシステムの概要

地域包括ケアシステムの概要
地域包括支援ケアシステムは、市町村や都道府県が地域の特性に応じて作り上げていくものです。高齢者の「住まい」を中心とし、「医療」「介護」「生活支援」「介護予防」が必要に応じて30分以内の移動で利用できる場所に設置されることを目標とします。

例えば、体調が優れない時には素早く医療機関を受診し、介護が必要になれば介護サービスを利用し、元気に暮らすために地域の活動に参加する、などです。

しかし、地域にどのような施設があり、自分がどのサービスを利用すべきかわからず困ってしまう高齢者もいるでしょう。そのような高齢者の相談窓口となるのが「地域包括支援センター」です。

地域包括支援センターでは、ケアマネージャーなどの専門知識を持った職員に生活の困りごとの相談や介護申請が行なえます。

4つの「助」

地域包括ケアシステムを支えるのは、地域による支援だけではありません。高齢者は以下の4つの「助」によって多角的に支えられています。

『自助』:介護予防への取り組み、健康寿命を伸ばすなどのセルフケア
『互助』:家族や地域での支え合い、ボランティア活動
『共助』:介護保険・医療保険サービスなどの利用
『公助』:生活保護、ボランティア・民間組織などへの税による公的支援

特に「自助」「互助」といった、高齢者やその家族の自発的な活動が地域包括ケアシステムの要点となります。なぜなら、2025年問題により医療・介護の需要に対して供給が不足するからです。

これからの健康問題は従来の「治す医療」や「福祉による支援」だけでは対応困難となり、「地域完結型」へとシフトしていきます。そのため、健康寿命を延伸するための高齢者への自立支援が欠かせません。

地域包括ケアシステム誕生の背景にある2025年問題

地域包括ケアシステム誕生の背景にある2025年問題
地域包括ケアシステムが誕生した背景には「2025年問題」があります。2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者になる2025年をさかいに、医療・介護・社会保障費の負担が急増することです。

厚生労働省の調査によると、2025年に看護職員は約196~206万人必要とされている のに対し、2018年末時点では約161万人 に留まっています。看護職は約3万人/年のペースで増加 していますが、これでは需要に供給が追いつきません。

厚生労働省「看護職員需給見通しの今後の進め方について」
厚生労働省「就業保健師・助産師・看護師・准看護師」
厚生労働省「看護職員の現状と推移」

医療・介護現場で働く看護師は人材不足を実感している方が多いのではないでしょうか。

また、「高齢者の日常生活に関する意識調査」での日常生活への不安に関するアンケート では、「健康や病気」「介護が必要になる」「生活のための収入」といった項目が上位に並びました。

内閣府政策統括官付高齢社会対策担当「高齢者の日常生活に関する意識調査」

高齢者自身も将来の生活の不安を抱えて過ごしているのです。

このような医療・介護者の負担や高齢者の不安を背景に地域包括ケアシステムが誕生しました。地域包括ケアシステムは2025年を目処に、高齢者ができるだけ自立し自分らしく生活し、人生の最期を自宅で迎えられる仕組みの構築を目指しています。

今後の課題

2025年問題の解決策として欠かせない地域包括ケアシステムですが、課題もあります。それは人材不足と地域差です。先に訪問看護の需要が増大していると説明しました。

しかし、厚生労働省が発表した「病院・有床診療所・訪問看護・介護保険サービス の看護職員数の推計値について(ごく粗い試算)」では深刻な人材不足が指摘されています。

2025年に必要とされる訪問看護師が約12万人であるのに対し、2016年時点では4.7万人 と大きく不足しているのです。

厚生労働省「病院・有床診療所・訪問看護・介護保険サービス の看護職員数の推計値について(ごく粗い試算)

いかにこのギャップを埋めていくかが課題となります。また、地域包括ケアシステムは地域の特性に沿って作り上げられるものです。

財源やマンパワーといった資源には地域差があります。地域の高齢者を支えるのに十分な資源を持たない地域の存在も課題です。

地域包括ケアシステムにおける看護師の役割は大きい

地域包括ケアシステムにおける看護師の役割は大きい
高齢者が地域で安心して暮らすためには医療と介護の連携が不可欠です。地域包括ケアシステムにおいて、看護師は「医療」と「生活」の両方の視点を持つ大切な役割を果たします。

近年、在宅復帰に特化する「地域包括ケア病棟」が登場しました。医療機関で勤務する看護師は患者の在宅復帰をより強く意識した関わりが必要です。

患者の退院調整時に医療と生活の両方の視点から情報提供、在宅復帰に向けたサポートといった役割を担います。

また、地域で活動する看護師に期待されるのは、高齢者を中心として家族、医療・介護者、地域を連携させる中核としての役割です。常に予防的な視点を持ち、高齢者ができる限り地域でその人らしく暮らすことを支援します。

高齢者を多角的にアセスメントし、他職種へ情報提供し必要に応じて援助を求めることも看護師の役割です。

そして、高齢者が在宅で人生の最期を迎える場面においても看護師の支援は欠かせません。本人の苦痛を緩和し、家族の不安の軽減の支援に努めます。家族間ではなかなか口にしにくい話題なので、看護師が間に入って意思決定を促す必要があるのです。

このように地域包括ケアシステムにおいて看護師は大きな役割を担います。一人でも多くの高齢者が住み慣れた地域に戻るためには、看護師による医療と介護の連携が重要なのです。

療養の場が医療機関から在宅へ移行、訪問看護の需要が増大

療養の場が医療機関から在宅へ移行、訪問看護の需要が増大
厚生労働省が発表した「在宅医療・介護の推進について」では、国民の60%以上が自宅での療養を望んでいることが明らかにされました。

厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」

地域包括ケアシステムは「自宅で療養したい」という高齢者の希望を叶える役割も持ちます。高齢者の在宅療養に欠かせないのが訪問看護。複数の健康問題を抱える高齢者にとって医療は切り離せません。

医療機関から在宅への流れが加速しています。全国訪問看護事業協会の発表した「2019年訪問看護ステーション数調査結果」によると、全国の訪問看護ステーションの数は右肩上がりに増え続け、2018年に10,000箇所を超えました。

全国訪問看護事業協会「2019年訪問看護ステーション数調査結果」

それに伴い訪問看護師も急増しています。今後も訪問看護の需要は増大していくでしょう。

今後の展望

地域包括ケアシステムは超高齢化社会を迎える日本において、今後より注目されていくでしょう。今後の展望として課題の解決はもちろんですが、高齢者が自立する意識を高め、自分らしさを発揮できるきっかけとなることが期待されます。

また、地域包括ケアシステムによって地域で働く看護師が増えるでしょう。地域包括ケアシステムによって、高齢者だけでなく看護師も自分らしい生き方の実現に近づけるのではないでしょうか。

地域包括ケアシステムを活用して、地域で働くことを希望している方は、ぜひ転職エージェントにご相談ください。

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