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オリンピック、マラソン、イベント・・・集団への看護に必要なポイントとは?

オリンピック、マラソン、イベント・・・集団への看護に必要なポイントとは?

2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されれば選手、観客、メディア合わせて1,000万人以上の人が動員されることが予測されていました。

引用:2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた都市鉄道の取組(国土交通省)

集団に対する健康危機管理にあたる看護師には平常時とは異なる視点と役割が求められます。
感染症対策が注目される状況でイベント規模の大小に関わらず看護師に求められる役割は重要視されるようになっていくでしょう。
今回は集団への看護の特徴とポイントについて説明します。

病院との環境の違い

院外の集団への看護において病院との環境の違いを理解しなくてはいけません。
救護所に設置されている医療資材は最低限の応急処置用であり多くの場合、使ったことのないメーカーのものがあるでしょう。
傷病者が発生してから物品を確認していては間に合わないので、まずはどのような医療資材がどこに設置されているかを把握していきます。
医療資材について把握すれば救護所で行える対応の範囲もわかりますので救急搬送もスムーズになるでしょう。
また、集団の場では盗難にも注意が必要です。
医療資材だけでなく救護室の備品も高級品は盗難の被害にあうことが十分予測されます。

病院との違いは医療資材だけでなく人材も全く異なります。
場合によっては1人も顔見知りのスタッフがいない状況も想定しておかなければなりません。
マンパワーが必要な場面で顔見知りのスタッフがいないというのはかなり不安な状況です。
一緒に働くスタッフについても可能な限り早い段階で顔・名前・職業・技能をお互い把握しておきましょう。

看護師に求められる役割

看護師に求められる役割
集団への看護にあたる看護師には、大きく分けて3つの役割が求められます。

①幅広い知識を持つ
②迅速かつ冷静な処置が行える
③高いコミュニケーションスキルを持つ

①幅広い知識を持つ

集団への看護はその場で発生した傷病だけでなく持病の悪化、突発性の疾患も起こりえます。
全身の疾患やあらゆる症状への幅広い理解と対応が必要です。

②迅速かつ冷静な処置が行える

救命のために1分1秒でも早い処置が求められる場合があります。
急変時にも迅速かつ冷静な処置が必要です。

③高いコミュニケーションスキルを持つ

初対面のスタッフと事前情報がない傷病者へ看護を行う場合、適切な情報を引き出すための高いコミュニケーションスキルが求められます。
情報を引き出すだけでなく、適切な形で相手に伝えるスキルも必要です。

感染症対策

感染症対策
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大があり感染症対策は特に注目されています。
感染兆候がある傷病者に対応する場合は「標準予防策」と「感染経路別予防策」の徹底が必要です。
感染症は新型コロナウイルスだけではありません。
すべての感染症の可能性を考慮して対応できる準備が必要です。

特に最初に対応する医療者は感染伝播のリスクが伴うことを考慮しなければなりません。
大会の規模によっては「大会指定病院」が設置されていることがあります。
最小限の感染リスクで医療機関へ搬送するサポートが看護師の役割です。
また、外国人の中には感染予防対策に対する意識水準が低い人がいる場合も考えられます。
参加者へ基本的な感染予防行動を啓発するのも看護師の役割です。

熱中症の予防・ケア

熱中症の予防・ケア
屋外・屋内に関わらず熱中症対策は重要です。
特に夏季の大会は死者が出るリスクが高く、記録的猛暑が観測された2018年は95,137人と過去最多の人数が緊急搬送されました。

引用:夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン2020(環境省)

熱中症対策において看護師に求められる役割は「予防」と「初期対応」です。
熱中症の予防の際にはさまざまな気象条件を組み合わせた「暑さ指数」を用います。
暑さ指数を基に熱中症リスクを考え予防行動を啓発し、場合によっては運動や作業中止の判断もしなければなりません。
また、熱中症リスクの大小に関わらず水分摂取、定期的な休息、体調管理といった基本的な熱中症対策は常に呼びかけましょう。

熱中症は初期対応が大切となります。
なぜなら、初期の熱中症は症状が生あくびや集中力低下といったあいまいなもので見落とされやすいからです。
重症化を防ぐためには、熱中症を疑う症状が見られたら水分・電解質補給と涼しい場所での休息を促しましょう。
看護師には適切な観察力と早期の初期対応が求められます。

多数傷病者事故への対応

交通事故や災害が発生すると通常よりも大規模な多数傷病者事故となるリスクがあります。
多数傷病者事故が発生した場合の対応はCSCATTT(スキャット)を基本としましょう。
CSCATTTはイギリスで開発された大規模災害の対応に必要な7つの基本原則です。

・C=指揮と連携(Command & Control)
・S=安全(Safety)
・C=情報伝達(Communication)
・A=評価(Assessment)
・T=トリアージ(Triage)
・T=治療(Treatment)
・T=搬送(Tranport)

看護師は初期対応、トリアージ、搬送、指揮系統の立ち上げなど多数の役割が求められます。
また、多数傷病者が発生すれば消防や警察も介入し混乱が避けられません。
そのため、自分の役割を確実に把握して対応にあたる必要があります。

銃・爆弾を用いたテロ行為への対応

銃・爆弾を用いたテロ行為への対応
2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件や2015年のパリ同時多発テロ事件といったテロ行為が近年発生しています。
世界情勢が激しく変化する時代であり日本もいつ、このようなテロ行為に巻き込まれるかわかりません。
特に集団が形成される大会がターゲットにされる可能性は大いに考えられます。

テロ行為が発生した場合、看護師はまず自らの身の安全の確保に努めましょう。
そして負傷者の初期対応にあたります。
初期対応は①活動性出血の確認と止血②気道確保③呼吸管理④循環管理⑤保温の順で行い、負傷者を生存させたまま医療機関へ搬送することが最優先です。

銃や爆弾による負傷は重症となりやすく適切な処置が求められます。
大量出血の制御、気道確保、呼吸管理、循環管理、体温管理を優先して処置にあたりましょう。
また、予測不能な事態が発生すると負傷者以外の人も不安と恐怖から混乱することがあります。
看護師は落ち着いて求められる役割に従事することが大切です。

まとめ

2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックが開催される場合、過去の大会以上に集団への看護の必要性が高まるでしょう。
看護師は病院との環境の違いを知り、集団への看護のポイントを押さえた対応が求められます。
集団への看護に従事する場合にはぜひ参考にしてみて下さい。

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