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患者さんがLGBTだったらどう対応する!?看護師が知っておくべき配慮の仕方

患者さんがLGBTだったらどう対応する!?看護師が知っておくべき配慮の仕方

看護師の仕事は、多種多様な患者背景を理解することが大切です。病気・病状、社会的背景がまったく同じという患者さんはいません。患者さん一人ひとりの全体像を理解し、その人に合った対応をする必要があります。

もし、目の前の患者さんがLGBTだったら看護師としてどう対応すべきだと思いますか?看護師の配慮のない対応に傷ついたり、病院への受診が怖いと感じたりしているLGBTの人もいます。

今回は、LBGTについての基礎知識をはじめ、LBGTの人が病院で直面する困難や、看護師としての配慮の仕方などについてお話しします。

LGBTとは?

LGBTとは?
LGBTとは、性的少数者の総称をいいます。心の性が女性で恋愛対象も女性のレズビアン(Lesbian)、心の性が男性で恋愛対象も男性のゲイ(Gay)、心の性に伴わず恋愛対象が女性にも男性にも向いているバイセクシャル(Bisexual)、身体の性と心の性が一致せず身体の性に違和感を持っているトランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとって「LGBT」と名付けられました。

トランスジェンダーにはさまざまな人がいて、戸籍上の性と性自認が一致しない人を、MtF(Male to Female/男性から女性)、FtM(Female to Male/女性から男性)と表現します。

また、性自認が男性とも女性とも断言できないセクシュアリティのことを、Xジェンダーといい、戸籍上の性が男性でXジェンダーの人をMtX、戸籍上の性が女性でXジェンダーの人をFtXと表現します。

「トランスジェンダー=病気・精神疾患」というイメージを持っている人もいるかと思いますが、2018年6月にWHOはトランスジェンダーを「精神疾患」から除外することを宣言しています。

“ジェンダーの違和感は、個人の経験豊富な性別と割り当てられた性別との間の顕著な永続的な違和感によって特徴付けられます。性別バリアントの行動と好みだけでは、このグループの診断を割り当てる基礎ではありません。”

引用元:ジェンダーと不一致(WHO)

LGBTの人に出会う確率

LBGTの人に出会う確率はどの程度なのでしょうか。

LGBT総合研究所が2019年に全国20~59歳の個人42,8036人を対象にスクリーニング調査を実施し、LBGT・性的少数者に該当する人は約10.0%という結果が出ました。

引用元:LGBT意識行動調査2019(LGBT総合研究所)

10%ということは、10人中1人はLGBTおよび性的少数者ということになります。日本人のAB型の割合と同じ割合です。LGBTの人と出会う確率はかなり高いと思いませんか?

日本のLGBTへの対応

世界的にLGBTの権利を認める法律の整備が進んでいる中、日本におけるLGBTへの対応の現状どうなっているのでしょうか。

日本国憲法第14条第1項に、“すべて国民は、法の下に平等であって、人権、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。”とあります。LGBTであることを禁じられていませんし、LGBTを差別することは憲法に違反することとなります。

しかし、現状ではLGBTに対する差別やいじめがあるのが事実です。差別を受けたり、心ない言葉をかけられたり、LGBTを否定する言動を取られたりすることが実際にあるそうです。なので、LGBTであることをカミングアウトできずにいる人は少なくありません。

「周りにLGBTの人がいないから、自分には関係ない。」と思っている人も多いでしょう。しかし、前項でもお伝えしましたが、LGBTの人の割合は10人に1人。いつどこで出会うかわかりません。もしかしたら、LGBTの人がカミングアウトしていないだけかもしれません。

実際、私の友人はLGBTだということを、友人になって5年経って、やっと打ち明けてくれました。また、ほかの女性の友人は、レズビアンの女性と付き合ったことがあります。彼女自身はレズビアンでもバイセクシャルでもなく、いまは男性と結婚しています。このように、意外と身近にLGBTの人はいて、LGBTの人と関わる機会は少なくないのです。

医療現場で働いている看護師は、たくさんの患者さんに出会います。患者さんの中にLGBTの人がいてもおかしくありません。

また、日本のLGBTへの対応の課題のひとつ、同性愛者同士の結婚を法的に認めていないということがあげられます。同性パートナーシップ証明制度を導入している自治体はありますが、国が法律上認めているわけではなく、同性カップルの結婚は法的に保護されていません。法律の整備を進めていくと同時に、一人ひとりがLGBTに対する理解を深めていくことが必要です。

LGBTの患者さんが病院で直面する困難

LGBTの患者さんが病院で直面する困難
LGBTの患者さんは病院でどのような困難に直面しているのか、具体例と共に紹介していきます。

保険証の提示

例:外来にきた初診の患者さん。保険証の性別は男性、名前も男性の名前が記載されているが、外見は女性。性別、本人確認をしたいけど、どうすれば?

外来受診や入院した時に必要となる保険証の提示。とくにトランスジェンダーの人が困難を感じる場面です。性別を問うのは医療の現場では自然の流れです。

しかし、この当たり前に行っている行動が、性自認と戸籍上の性が異なるトランスジェンダーの人にとっては精神的苦痛となります。また、保険証に書かれている性別と外見が異なるため、「他人の保険証だと疑われるのでは?」、「変な人扱いされるのでは?」とのいう不安も抱えています。

問診票の性別欄

例:外来受診したトランスジェンダーの患者。問診票の性別欄は戸籍上の性別を書くべきか、自認している性別を書くべきか……

問診票の性別欄でどちらの性を記載するべきか悩む人は少なくありません。医療安全の観点から、性別を把握することは必要なことであり、LGBTではない人にとっては些細なことですが、性自認している性と違う性に〇をつけることは、トランスジェンダーの人にとっては苦痛なのです。

フルネームのアナウンス

例:外来での待合室。看護師がフルネームで患者さんをアナウンスし、立ち上がった人は男性っぽい名前なのに外見は女性。看護師に名前を再度確認されたり、ほかの患者さんの目が気になったりする。

外来の待合室で、看護師が患者さんのフルネームで呼びかけるのはよくあることです。しかし、トランスジェンダーの人は、名前と外見が異なることがあるため、ほかの患者さんにもトランスジェンダーであることがバレたり、好奇な目で見られたりする可能性があります。LGBTへの差別や偏見を持っている人は残念ながらいますし、周りの視線はストレスとなります。

キーパーソンについて聞かれたとき

例:LGBTの患者。入院するにあたり、キーパーソンや結婚について聞かれたが、自分はレズビアンであり、婚姻関係にはないが、同棲している彼女がいる。なんと答えればよいのか返答に悩む。

キーパーソンの把握は、とても大切なことです。しかし、質問の仕方によっては、LGBTの患者さんが答えにくいものにしている可能性があります。

例のようにレズビアンの女性には、同棲している彼女がいるとします。彼氏と答えるべきなのか、または結婚はしていないが、同棲期間が長ければ家族同様に親しいので、家族と答えるべきなのか。そもそも、看護師にLGBTであることをカミングアウトしなければならないのか。

性別を限定する言葉や質問は、LGBTの人にとって、とても答えにくいものです。

入院中の病室やトイレ、入浴

例:トランスジェンダーの患者さんの入院が決まったが、病室は男部屋か女部屋かどちらにするべきかわからない。トイレも男女で分かれているし、入浴も男女で時間を決めている。どう対応すれば?

男性部屋に女性がいたり、女性部屋に男性がいたりすると、ほかの患者さんは不思議に思いますし、トランスジェンダーの患者さんにもカミングアウトせざる環境を作ってしまう可能性があります。個室だと差額が発生するので、個室にすれば解決というわけでもありません。

トイレや入浴もトランスジェンダーの人にとって、男性用、女性用どちらを使用すればよいのか悩みますし、周囲の目も気になります。

インフォームドコンセントや面会

例:同性パートナーがいるが、法的な家族でないため、医師からの説明に同席させてもらえない。

医師からの病状説明や治療・手術の同意書のサインは、法的な家族しか出来ないという病院は少なくありません。ICUなど面会制限を設けている病棟では、家族以外の面会を断っている場合もあります。

同性パートナーがいて、入院中や退院後もパートナーが面倒を見てくれることになっている。しかし、法的に家族ではないという理由で、遠方で疎遠の家族がキーパーソンとなるというケースも少なくありません。

看護師としてのLGBT患者さんへの配慮の仕方

看護師としてのLGBT患者さんへの配慮の仕方
患者さんがLGBTだった場合、看護師としてどう対応すべきなのでしょうか。前項で紹介したLGBTの患者さんが直面する困難に沿って、適切な配慮の仕方を紹介します。

保険証の提示

まずは、LGBTの患者さんもいるということを頭に置いておきましょう。戸籍上の性別と外見が異なる患者さんが来ても焦ることなく対応することができます。

保険証に関しては、通称名や表面の性別欄に表記せず、裏面の備考欄に戸籍上の性別を表記できます。こういう記載方法があるということを知っておきましょう。また、本人に性別を確認する場合は他の患者さんに聞こえないよう、小声で聞いたり、筆談にしたりするなどの配慮も必要です。

問診票の性別欄

戸籍上の性は保険証でも確認できるので、トランスジェンダーの人があえて記載していない場合、再度確認はせず、相手の思いをくみ取るよう心がけましょう。どうしても記載が必要な場合、男・女とは別に「その他」の項目や余白を設けるのもいいですね。

フルネームのアナウンス

通称名でアナウンスする、もしくは番号札に変更し、アナウンスは番号と名字だけにするなどの配慮をしましょう。フルネームでの本人確認は診察室に入ってからでも遅くありません。

キーパーソンについて聞かれたとき

女性に対して「旦那様」「彼氏」、男性に対して「奥様」「彼女」と、性別を限定する聞き方をするのではなく、「パートナーはいますか?」「キーパーソンはどなたにしますか?関係性は?」といった質問の仕方の方がLGBTの患者さんも答えやすくなります。

入院中の病室やトイレ、入浴

病室に関しては、まずは患者さん本人の希望を聞きましょう。トランスジェンダーだから、性自認が女性だから女性部屋などと決めつけない方がよいです。トランスジェンダーの人でも、外見を性自認に近づけているとは限りませんし、もしかしたら個室を希望する可能性もあります。

トイレに関しては、身障者用トイレの利用を勧めたり、入浴時間も介助浴の時間に入浴してもらったりするなどの工夫が必要です。入院患者さんはたくさんいるので、トランスジェンダーの患者さんの希望だけを叶えることはできませんが、本人が納得した形で入院生活を送れるよう配慮しましょう。

インフォームドコンセントや面会

以前、ICUで勤務していたとき、LGBTの重症患者さんがいました。ICUでは、面会は原則家族以外できないことになっていましたが、その患者さんは同性のパートナーと長年一緒に暮らしていたため、特別に面会を許可していました。医師からの病状説明や面会者を法的の家族に限定するのではなく、病院側は柔軟に対応する必要があります。

まとめ

看護師のLGBTの患者さんへの適切な対応の仕方を紹介しました。LGBTのことを正しく理解し、患者さんがLGBTかもしれないということを頭に置いておくことで、焦ることなく適切な対応ができます。

LGBTの患者さんに配慮のない対応をして、傷つけてしまわないようにしましょう。医療従事者はどんな人へも平等に医療を提供しなければなりません。LGBTの患者さんが安心して医療を受けられる環境づくりが大切なのではないでしょうか。

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