早く丁寧に看護サマリーを書く方法
看護師の仕事といえば、体温や血圧測定、食事の介助といった患者さんの日常生活のお世話を想像するかもしれません。しかし実際の仕事は、そういった患者さんのケア以外にも、看護記録や看護計画などの、パソコンに向かって行う事務作業も多く存在します。
その事務作業の1つが「看護サマリーの作成」です。「毎日の食事介助や清拭だけで手いっぱいで、看護サマリーを書く時間がとれない!」多忙な看護師はそう感じてしまうことも多いかと思います。
今回は、要点を押さえて簡潔に、丁寧で相手に分かりやすい看護サマリーを書くポイントについてご紹介します。
看護サマリーの必要性
看護サマリーとは何か
看護サマリーとは、患者さんのこれまでの経過や情報を要約したものです。氏名・生年月日・住所といった基本情報から、入院中の治療経過、入院中どのような介助を必要としたか、コミュニケーションは問題なくとれるのか、といった細かな生活状況まで記載されます。
看護サマリーをみれば、患者さんが現在どのような状態であるか、すばやく全体像を把握できるのです。
看護サマリーを書く目的
患者さんの転院時、もしくは在宅医療へ移るときに看護サマリーが必要となります。看護サマリーとは、いまの治療がひと段落して別の病院・施設へ移るとき、次の施設での看護ケアの継続を保証するために送付する書類です。医師が、転院先の担当医に向けて紹介状を書くように、看護師は転院先で患者の看護を行う人に宛てて看護サマリーを書くのです。施設にいくなら施設看護師に、在宅なら訪問看護師に宛てて書くことになります。
患者さんにとって快適な看護が継続して行われるために、次の看護者に伝わる丁寧な看護サマリーを書く必要があるのです。
具体的に何を書くのか
看護サマリーは、施設ごとに書式が異なります。一般的な項目をご紹介します。・基礎情報(氏名、生年月日、住所、連絡先など)
・現病歴(入院目的、治療の経過)
・内服薬(内服している薬、管理方法)
・患者の身体状況(寝たきりの度合い、歩行状態、コミュニケーションの可否など)
・生活支援の状況(排泄、食事、更衣などADLがどこまで自立しているか)
・医療処置の有無と内容(褥瘡の有無・処置、経管栄養、ストーマなど)
・社会的介護力(同居家族の有無、サポートしてくれる人がいるか)
これ以外にも、様式によって項目が異なります。
書き始める前の心得
看護サマリーは他施設へ提出する正式な書類です。誤字・脱字のないように、何度も見直して丁寧に書く必要があります。職場に記載マニュアルがあれば目を通しましょう。
作成後は、上司に提出し、上司の承認後、患者本人(もしくは家族)にも確認していただきます。本人・家族が読んだときに不快感を持たれないよう、言葉の使い方に注意が必要です。
また読み手に一度で伝わるよう、長い文章でだらだら書くのではなく、短い文章で簡潔にまとめると読みやすくなります。
まずは記入欄全体に目をとおす
初めて看護サマリーを書く人は、焦ってサマリー用紙の1番上の項目から記入を始めてしまいがちですが、まずは落ち着いて、記入用紙全体に目をとおします。だいたいどんな内容を書く必要があるのか、大まかに把握してください。今すぐに書けそうだなと感じる項目もあれば、書き方に迷う項目もあると思います。「こんな内容を書くのだな」と、ざっくりでいいので感覚をつかんでください。
情報収集を行う
項目を見て、現段階で書けないところは自分の情報収集が不足している項目です。とくに「治療の経過」や「現在のADL」は日々変化していくので、把握している情報が古くなりがちです。自分が今どんな情報が足りていないか具体的に把握します。たとえば、生活支援状況の【排泄】についてであれば「手術のあと、歩行が安定しなくてポータブルトイレを使っていたな。今は歩いてトイレまで行っていけるようになったのかな」と、自分がどこまで把握していて、どこから分からないか情報を整理します。
ポイントが分かったら、情報収集を行い率先してそのケアに関わるようにしましょう。
たとえば「保清項目」について情報が足りないと感じたら、日中の保清の時間帯にはその患者さんの保清担当につけるよう、スケジュールを自分で調整する。「食事」であれば、食事の時間帯に合わせて訪室し、場合によっては食事の介助をするといった具合です。
時間がなくて直接ケアを行えない場合は、ほかの看護師から情報共有を行ったり、患者さんに「何か困ったことなかった?」と一言声かけをしたりするだけでも違ってきます。
また、時間がなくてすぐに情報が欲しいときは、看護記録を確認すると患者さんの状態を時系列で把握できますよ。
サマリーを書く手順
基礎情報の書き方
氏名や連絡先といった個人情報が含まれるため、間違いがないよう落ち着いて記載します。介護保険の申請や介護度については退院時のものを記載してださい。分からなければ、本人・家族に聞きましょう。ケアマネージャーと直接関りがあれば、そちらからも情報収集が可能です。
現病歴の書き方
序盤・中盤・終盤に分けて記載します。経過が長い人は、その過程をだらだらと書きがちですが、要約で問題ありません。序盤には入院日と入院目的を書きます。たとえば「〇年〇月〇日、自宅にて転倒。〇月〇日、右)大腿骨転子部骨折により手術目的で△△病院◇◇科に入院となる。」といった具合です。
中盤には治療内容とその結果を書きます。手術をしたなら、いつ・何の手術をして・術中の問題はなかったか・術後の経過はどうであったか。
化学療法であれば、いつからいつまで何を投薬したか・計何クール行ったか・副反応の様子・そのごの状態です。
褥瘡の発生・処置や転倒・転落など、経過の途中で看護上の問題があった場合も一緒に記載してください。あわせて、対応策や看護を行う上で気をつけてきたポイントも記します。
終盤は、今回の転院の目的を記載します。リハビリを行うための転院であれば「術後の経過良好により、今回リハビリ目的で貴院へ転院のはこびとなる。」といったように記すと簡潔で分かりやすいです。
ADLの書き方
ADLには次に看護ケアを行う人宛に、依頼したいことを記載します。看護ケアを一生懸命にする人ほど、自分主体で介助の内容をつらつらと書いてしまいがちですが、分かりやすい看護サマリーを作成するには、読み手の目線で書くことが大切です。あらかじめ把握しておいたADLについて「どこまで自力でできて・どういった介助が必要か」を読み手目線で書く必要があります。
たとえば、更衣についてであれば「裾をまくる介助をすることで、自分で衣服に袖を通すことが可能です。ボタンの着脱は、手指の巧緻障害により困難であるため、介助をお願いします」といった具合です。
文章を読めば、初めて会った相手でも何を介助すればいいかが具体的に分かるよう記載しましょう。
また、サマリー内で「できること」と「できないこと」を明確に示しておくことは、転院先での患者さんの効果的なリハビリや看護ケアにつながります。情報が整理されているので、看護者がADLを拡大させる方向に関わりをもちやすいためです。
看護問題の書き方
難しく考えてしまいがちな項目ですが、ここは現時点であがっている看護診断を要約して記入すれば大丈夫です。褥瘡があり、処置を行っていれば「皮膚統合性障害」を、歩行器歩行で足元がおぼつかなければ「転倒リスク状態」といった具合に、いま問題となっている診断を記載します。問題解決のために自身が行ってきた看護ケアもあわせて記載してください。
看護問題は、患者さんの状況の変化とともに変わるので、転院後は転院先の状態にあった看護問題が立案されます。先を見据えて、というよりも、現時点での問題の要約を書くと考えれば少し書きやすくなるのではないでしょうか。
提出前のチェック事項
すべて書き終わったら、始めから読み返して誤字・脱字がないか、記載漏れがないかをチェックします。パソコンで入力した人は、印刷して紙面で目を通すことでパソコン入力のときとは目線がかわり、記載ミスに気付きやすくなるはずです。
まとめ
とくに、新人のうちは目の前の業務をこなすことで手いっぱいです。いざパソコンの前に座ると「何を書くのだっけ?」と、頭がフリーズしてしまうこともあるかと思います。
今回紹介したポイントを押さえることで、日々の業務の中で情報収取ができ、効率的に看護サマリーが書けるようになります。
また、看護師として経験をつめばつむほど「この経過なら今後はリハビリ病院に転院かな」ど、あらかじめ患者さんの回復過程を想像できるようになるはずです。先手先手の情報収集ができると、看護サマリーの記入はグッと楽になります。
それでも、「自分はサマリーなどの事務作業が苦手。書類作成は極力少ないほうがいい!」という人は、事務作業の少ないクリニックや訪問看護などの職場を選ぶという手もあります。
職場によって業務内容は大きく異なります。気になる人は、転職サイトなどでほかにどんな職場があるか、情報収集してみるのもおすすめですよ。
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