看護にAIはどの程度浸透している?看護師にもっとも必要なロボットは書類書きをしてくれる存在?
いま、IT(Information Technology)を使っていない人はほぼいないのではないでしょうか。このコラムが読めているのもITのおかげです。
では、AI(Artificial Intelligence:人工知能)はどうでしょうか。AI、AIと名前は聞くものの、日常にはまだまだ入り込んでいない上に、看護の現場ではまったく導入の予感すらない、そう思っておられるのではないでしょうか。
では、AIが看護の現場に入り込んだら、いったい看護師の仕事はどうかわり、医療の現場はどう変化をもたらすのでしょうか? 今回は、看護とAIの関係に迫ってみます。
AIと看護の関係
ただ、医師が学ぶ医学については、比較的AIの導入が早いような感触があります。シミュレータや処方ロボットの研究など、知的労働(であり肉体労働)である医師の場合は、業務を一部肩代わりしやすいのがロボットや人工知能のジャンルであることは事実です。
一方で、介護の現場には、極度のアナログ作業や肉体的負担を軽減するため、パワードスーツなどの導入が検討段階にあります。AIだけでなく、IoT(Internet of Things もののインターネット)も導入が進み、見守りや徘徊時の警告アラームなども数多く開発されているところです。
看護の現場では、たとえば限られた夜勤メンバーで見回りをする際、ベッドマットにコンピュータチップの入ったシートを敷き、ベッドから起き上がったらコールが鳴るような仕掛けも考えられます。そうすれば、何かトラブルがある場合にのみ、ナースコールを押さなくとも駆けつけることができるのです。
看護ロボット『パロ』の活躍
また、将来的には調剤の分野でAI化が進むと考えられ、薬剤師の世界も大きく変わることが予想されます。では、看護の現場はどうなのでしょうか。
医学・介護・調剤の分野ではこれらITおよびAI化が非常にわかりやすいものの、資格職の人数が多く、仕事もヒューマンリソースに頼りがちな看護師の仕事には、まだまだ導入が進んでいないものと考えられます。
ただ、看護の仕事で特徴的なサービスが認知症の患者さんをケアするロボット『パロ』の存在です。パロは大和ハウス工業が開発したセラピーロボットで、AIが搭載されており、持ち主の感情を読み取り、適切な表情や動作で返すので、コミュニケーションやセラピーを促進します。
パロは産総研でもその実績が評価されています。
産総研:パロとのふれあいによる介護予防
パロは早くも2002年に開発されており、さらには年間36万円+税と、決して安くはありません。しかし、これまで看護師および介護士が話し相手になっていたものを、AIが代替してくれるのであれば、コストの面から見ても導入に踏み切ることは懸命ではないでしょうか。
また、肉体的なお世話ではなく精神的なお世話の場合は、相性の問題も生じやすく、同時に看護師や介護士の側もストレスの生まれる感情労働的側面があります。
よって、こうしたAIの導入は徐々に徐々に、精神的負担を軽減する側面からも導入されつつあるのです。パロなら実績も豊富ですし、受け入れられやすいと考えられます。ただ、パロ以上のAI導入が未だ進んでいないのは大きな課題です。
書類の時間を代替すべき?
時間内労働
時間外労働
これが時間外労働になると、約30.8%が記録仕事をしていることになります。みなさんも、書類書きが終わらないから残業するということが非常に頻繁にあるのではないでしょうか?
看護師の労働のうち、11.5%が書類書きや引き継ぎに使われている現状。AI化がなされるとすれば、まずはここからではないでしょうか。
たとえば、ひとりの患者あたり1時間、書類仕事にかかっているとすれば、年間1万人が来院する病院の場合、音声入力等が実現して3倍のスピードになれば、年間約3,300時間もの削減となります。これは十分な働き方改革ではないでしょうか。
病院の経営側から見ても、医療財政を預かる厚生労働省側から見ても、看護師の時給が2500円だとして年間825万円もの人件費削減になるので、これは導入しない理由を見つけるほうが困難になってしまいます。
最後に
いま、ひとりの市民としても、病院に通ったときお医者さんがパソコンばかり見てこちらに関心を払ってくれないという隠れた不満を持つことはありませんか?
そうした不満が取り除かれ、ケアが促進され、看護師の労働時間の削減になるのでしたら、これは昨今の働き方改革の流れにも合致するものです。
特に、診断書、入院計画、紹介状、紹介状への返事、オペ記録など、膨大な書類仕事は医師と看護師を苦しめ、医療の質を下げていることは確かです。
なのであれば、いま、AIで書類仕事から削減するようにしてみるのはいいかもしれません。
AIときくと、世間では「人間の仕事を奪う」として大々的に宣伝されていますが、専門職が本来的な意味での仕事に専念するために、必要不可欠なテクノロジーであると定義すると、より看護の未来が見えてくることは間違いないでしょう。
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