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燃え尽き症候群にならないために

燃え尽き症候群にならないために

現代社会で日々働いていると、「燃え尽き症候群」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。「バーンアウト」とも呼ばれる燃え尽き症候群は、年々社会的な問題として注目されるようになりました。

とくに、昨今の新型コロナウィルスの感染拡大による医療への負担は、医療従事者の燃え尽き症候群を加速させています。

新型コロナウィルスと燃え尽き症候群の関係を調べた調査では、治療に関わる医療従事者のうち4人に1人が、自分を燃え尽き症候群と認識していることが明らかになりました。

いまは健康でも、この先燃え尽き症候群になる可能性は全員にあるといえます。そのため、燃え尽き症候群についての正しい知識や対処方法、予防方法を身につけておきましょう。

燃え尽き症候群とは

燃え尽き症候群とは
燃え尽き症候群は「理想に燃え使命感にあふれた人を襲う病」です。いままで普通あるいは熱心に仕事をしていた人が、「燃え尽きた」ように意欲を失って仕事を休職、または辞職に至る様子からそう呼ばれるようになりました。

特徴的なのは、燃え尽き症候群となる人が最初から意欲のない怠け者ではない点です。仕事に対して熱意を持ち、精力的に働いていた人が急にやる気を失ってしまいます。

燃え尽き症候群は病気?

燃え尽き症候群に対して、「ただ何となく仕事にいきたくない状態」程度の認識ではありませんか?

実は燃え尽き症候群は、WHO(世界保健機関)の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)』第11版(ICD-11)に「雇用および失業に関連する問題」として追加されています。つまり、燃え尽き症候群は医学的診断名であり、世界的に認められているということです。

一方で、IDC-11では燃え尽き症候群の定義は数多くあり、「〇〇だから燃え尽き症候群」と明確に定義付けることは難しいとされています。またWHOは、燃え尽き症候群は病気ではなく、仕事に関連して健康に影響を与える要素であるとの声明も出しています。

そのため、適応障害や不安神経症、気分障害などの可能性がすべて除外されて、はじめて燃え尽き症候群と診断されるのが一般的です。

燃え尽き症候群の症状

燃え尽き症候群の研究として、マスラック・バーンアウト・インベントリー(Maslach Burnout Inventory:MBI) というマニュアルが出版されています。

MBIで定義されている燃え尽き症候群の症状は「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3つです。これらの症状のなかで、情緒的消耗感が主な症状として述べられおり、そのほかの2つの症状は情緒的消耗感の二次的な結果であると考えられています。

■情緒的消耗感
MBIには情緒的消耗感とは「仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」と定義されています。しかし、この説明を聞いても具体的にイメージできる人は少ないでしょう。

「情緒」とは、理性よりも感情の働きが強くなっている状態です。つまり、情緒的消耗感とは、仕事で論理的・倫理的に考えず感情のままに行動し、心身を消耗している状態を表しています。

たとえば、医療従事者をはじめとしたヒューマンサービス(人間相手のサービス業)では、相手を思いやる気持ちや、信頼関係の構築は非常に重要な要素です。人は無意識のうちに、こういった目標を達成するために情緒的なエネルギーを大量に消費しています。

看護師の場合、患者や家族との関わりのなかで日常的に情緒的エネルギーを消費していくことで、消耗・疲弊しています。それが限界を超えたとき、情緒的消耗感として「仕事を辞めたい」「職場に行くのが億劫」などの感情が現れるのです。

■脱人格化
情緒的消耗感が強くなると、人は情緒的エネルギーをなるべく使用しないように考えはじめます。その防衛反応の結果として現れるのが「脱人格」です。

脱人格は「クライエントに対する無情で、非人間的な対応」と定義されています。わかりやすく言い換えれば、「相手の人格や感情を無視した行動をとる」といった症状です。

医療従事者の場合、患者の名前ではなく疾患名だけで呼び区別するというのは、脱人格化の特徴的な症状といわれています。また、意図的に一般の人には難しい専門的な用語を使用して、煩わしい接触を避けるように行動するのも、脱人格化の症状として考えられています。

■個人的達成感の低下
燃え尽き症候群になる人は、発症以前は高品質のサービスを提供してきた人がほとんどです。そのため、情緒的消耗感と脱人格化によって現れる症状は、ヒューマンサービスの質に大きな影響を与えます。

献身的に患者や家族に接してきた看護師が、ある日を境に患者を疾患名で呼び、難しい専門用語を使って家族に寄り添わなくなったとしたらどうでしょうか。誰の目から見ても、看護というサービスの質の低下は明らかですよね。

MBIでは個人的達成感を「ヒューマンサービスに関わる有能感、達成感」と定義しています。情緒的消耗感や脱人格化によってサービスの質が低下すると、自分に対する周りの評価が著しく低下します。

そのため、自己肯定感が得られず個人的達成感が低下することになります。また、個人的達成感の低下は、強い自己否定による離職につながることも珍しくありません。

燃え尽き症候群の原因

燃え尽き症候群の原因
燃え尽き症候群は、ストレスへの反応のひとつとして考えられており、原因となるストレスには、「個人要因」と「環境要因」の2種類があります。

個人要因

情緒的消耗感でも説明しましたが、情緒的エネルギーを使用し他人と積極的に関わろうとする姿勢は、燃え尽き症候群になる主な原因です。

つまり、高品質のサービス提供にはそういった姿勢が不可欠であることを考えると、優秀な人材ほど、燃え尽き症候群の可能性が高くなります。

また、年齢や勤続年数は燃え尽き症候群に大きく関係しており、集中治療室の看護師を対象とした研究では、若い看護師ほど燃え尽き症候群になりやすいという結果が出ています。別の研究では、年齢が高く勤続年数の長い人は燃え尽き症候群のリスクが低いとの結果も報告されました。

年齢は若い人ほど、職業そのものや達成感、所属先のサポートへの期待が大きいです。それらが実際には、自分の期待と解離していたとき燃え尽き症候群になるリスクが高くなります。

年齢を重ねるとリスクが減少するのは、「ストレスへの対処が上達する」「現実と理想の折り合いをつけ環境への適応していく」からと考えられています。

環境要因

燃え尽き症候群の発症には、情緒的エネルギーを大量に消費する環境も原因として考えられています。

看護師に燃え尽き症候群の人が多いとされているのは、相手の性格や社会的背景まで理解する必要があり、そこに情緒的エネルギーを大量に消費するからです。さらに、受け持ちの患者は1人ではありませんから、患者が増えれば増えるだけ情緒的消耗感も増し、燃え尽き症候群のリスクは高くなります。

また情緒的エネルギーを使用する環境が、「自発的に選んだもの」か「他人から強制されたもの」なのかによって、燃え尽き症候群のリスクは大きく変化します。なぜならば、他人から強制された環境やスケジュールは、自分の力で解消するのが難しく、仕事を達成した充実感よりも疲労感が勝ってしまうからです。

燃え尽き症候群の対処法

燃え尽き症候群の対処法
燃え尽き症候群は、どれだけ気を付けていても熱心に仕事に取り組む限り、リスクを完全に無くすことはできません。

だからといって、適度に力を抜いて仕事をするという方法は現実的ではないですよね。それでは、どういった方法が適切なのでしょうか。

燃え尽き症候群の予防

燃え尽き症候群の予防は、「自分自身」と「仕事での役割」を切り離して考えることが効果的と考えられています。

つまりサービスを提供する相手に対し、親身になって対応すると同時に、その状況を客観的かつ冷静に判断するということです。同じニュアンスとして「プライベートと仕事を分ける」ということもあります。

関係を築こうと親身に接しながらも、一定の距離を保つという正反対の思考を両立するわけですから、もちろん簡単ではありません。しかし、達成できればサービスの品質を維持しながら、燃え尽き症候群のリスクである、情緒的エネルギーの消費を最小限に抑えることが可能です。

とはいえ、この方法の習得には時間がかかると同時に、燃え尽き症候群になるリスクが伴います。まずは、自分の能力を客観的に評価し「仕事内容や取り組む姿勢が能力に見合っているのかどうか」を判断するところから、取り組んでみるのがおすすめです。

この方法のほかにも、心身の疲労をため込まないようにする「適度な息抜き」は有効な手段と考えられています。

環境面から考えれば、意欲的に仕事に取り組める環境作りが有効です。たとえば、成功体験の実感や、達成した仕事に対する評価が受けられる職場であれば、燃え尽き症候群になるリスクを抑えられます。

新人のうちから職場環境を変えることは難しいですが、指導者や管理者の立場にある人は職場の人たちの燃え尽き症候群予防のために、環境作りに取り組んでみましょう。

燃え尽き症候群になってしまったら?

どれだけ気を付けていても、情緒的エネルギーの消耗は目に見てわかるものではないので、燃え尽き症候群になってしまうことはあります。

燃え尽き症候群の典型的な症状と照らし合わせ「もしかして燃え尽き症候群かも?」と思ったら、まずはしっかりとその事実を認めましょう。そのまま仕事を無理に続けても良くなることはほとんどありません。

その後、思い切って仕事から一度距離を置きリラックスできる環境に身を置きながら、心身の健康を取り戻すのが推奨されています。

それが終わってはじめて、燃え尽き症候群となった自分の仕事への取り組み方を振り返ったり、それを踏まえた再就職の職場を探したりする段階へ進むのがよいでしょう。

このように、燃え尽き症候群は社会人としての転機、もしくは新しい人生の出発点であって終点ではありません。そのため、もし燃え尽き症候群になっても悲観せず、ゆっくりと時間をかけて対処していってください。

まとめ

燃え尽き症候群は、年齢が若く熱心に仕事に取り組む人ほどなりやすいのが特徴です。その背景には、現実と理想との乖離や、幸福感が得られない職場環境などが関係しています。

燃え尽き症候群を予防するには、自分の能力と仕事内容を客観的に評価することから取り組むのが効果的です。その後、「自分自身」と「仕事での役割」を切り離して考える思考を徐々に身につけていきましょう。

もし燃え尽き症候群になったとしても、時間をかけて再出発の準備をすれば、必ず自分を取り巻く環境は良くなります。悲観せず、家族や友人、信頼できる上司や同僚を頼り回復を目指してください。

燃え尽き症候群になり、いまの職場で働き続けることが難しいと思ったときは転職エージェントにご相談ください。コーディネーターがあなたの状況を丁寧にヒアリングし、適切な選択肢を紹介してくれるでしょう。

ただし、転職エージェントとの相性もあるため、自分に合った転職エージェントを探すことも重要です。まずは複数の転職エージェントに登録してみて、コーディネーターと面談してみてはいかがでしょうか。

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